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【第14話】有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(6)
「お姉のヲタ芸すごいよ? キレッキレ」
有夏も箸を持ったまま不器用に両手をあげてみせた。
「ご飯中にそんなことしないの!」
有夏は素直に手をおろし、牛丼を一口ずつゆっくりと食べ始めた。
牛丼あるなら、白いご飯っていらなくね? なんて言いながら。
「いいけど。おかずをご飯の上に乗っけてソースとか染ますとおいしいし」
「……ごはんよりも肉を食べてね?」
「うんうん……ゲップ!」
腹をさすりながら牛丼を食べ進める有夏に気付いて、幾ヶ瀬は現実に立ち戻ったようだ。
「有夏、まさかもうシメにかかってない? 駄目だよ。まだこんなに残ってる」
一応すべての料理に手をつけたようだが、どれも半分以上残っている。
二人で食べても、しょせんこの程度だ。
「有夏、いっぱい残ってるよ。もっと食べてよ!」
ご飯茶碗に盛られたミニ牛丼は何とか平らげて、有夏が首を振る。
「ムリ! もうお腹いっぱい」
「駄目だって! もう少し頑張って」
土台、この量を二人でなんて無理な話だ。
好き嫌いはなく何でも食べる有夏だが、食は細い方である。
「しょうがねぇよ。隣りのクソビッチにでもやりゃいいじゃねぇの。残飯係として」
「やだよっっ!!」
幾ヶ瀬が吠える。
「国産牛だよ? 絶対にやるもんか! 有夏に食べてほしくて買ったんだからっ」
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