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【第14話】有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(14)
「いらねぇよ」
その行為というより、言い方にムカついたのだろう。
有夏は顔をしかめる。
「口動かすなら、てめぇが作った料理を平らげろ」
「ええっ、これは有夏のために作ったんだから……」
「うるせっ! 有夏、もう寝る!」
ベッドに這い上がって布団をかぶってしまった。
取り残された幾ヶ瀬はしばらくニヤニヤしていたが、ようやく目の前の大量の料理に気付いたようだ。
「え、どうするの。こんなに沢山……」
顔を覗き込んでも有夏は堅く目を閉じてしまっている。
「有夏ぁ……」
眠っていないのは分かるが、ここは下手に刺激しない方が良さそうだと判断した幾ヶ瀬、とりあえず箸をとる。
「え、俺が食べるの? 一人で? ホントに?」
渋々といった体で、彼はひとまず炒め物を片付けた。
次の料理に行く前に箸を放り出し、腹をさする。
背後で聞こえる寝息に耳を遊ばせて、幾ヶ瀬もベッドによりかかって目を閉じた。
「有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない」完
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