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【第15話】記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派(12)

「は? なにいって……」  縋るような口調に、有夏は顔をしかめる。 「ヤることヤっといて、今更デートもクソもねぇだろ」 「な、何てことを……有夏っ!?」  幾ヶ瀬が絶句する。  彼としては遊園地でなくとも良いのだろう。  恋人と2人で出かけたいという、それはささやかな望みの筈だ。  だが、極力外へ出ようとしない有夏に対しては過ぎた要求であるのも、また確かなことで。  双方、揉めたいというわけでは決してないのに、何となく気まずい沈黙が続く。  それを破ったのは幾ヶ瀬の方であった。 「行こうか、有夏」 「は? どこに……」  身構える有夏に、彼は柔らかく微笑みかける。 「コンビニ。一緒にアイス買いに行こう」 「う、うん……」  差し出された手を、ぎこちなく取る有夏。

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