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【第15話】記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派(13)
瞬時に指を絡め、強く握られて耳朶を赤らめる。
「手繋いで行くよ」
「ヤだよ、恥ずかしい」
玄関で靴を履きながら、幾ヶ瀬の動きが一瞬止まった。
「今の、もっかい言って」
「今の……なに?」
見ると幾ヶ瀬はニヤつきながら有夏の腰のあたりを凝視している。
「……お前はホントに気持ち悪ぃな」
ヒドイと返しながらも、幾ヶ瀬の顔はニヤけたままだ。
「そんな容赦ない有夏が好き。だけどベッドでの素直な有夏も大好き」
「なに言って……」
「だってベッドじゃ全然違うんだもん」
「だからなに言ってんだよ。お前のが全然違うわ」
靴箱の引き出しから鍵を取り出した姿勢のまま、幾ヶ瀬が固まる。
「じゃあさ、普段の俺とベッドの俺。どっちがいい?」
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