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【第16話】幾ヶ瀬Present's愛と笑いの怨念チャンネル(9)

 ツッコミ疲れたアタシは喉のイガイガを治そうとエヘンと咳をした。  咳払いの残響が夜の運動場に吸い込まれ、校舎に跳ね返る。  夜の学校……あらためて見るとやはり不気味だ。 「な、七不思議なんてあるんですかぁ、この学校に。ヤダ、コワーイ」  アタシがおどけてみせたのは、恐怖を振り払うためだ。  今更ナンだが、後半部分は無視された。 「学校には七不思議があるものなんだ。な、有夏!」  有夏チャンはこの期に及んで平然としている。  姉ちゃんより怖いモノはないというのがヤツの自論だから、今更オバケなんて怖くないのかな。  無言で校舎を見上げる様は……うん、カッコイイ。  その顔面はカッコイイ……のだが? 「七不思議か……例えば学校には巨人が潜んでるけど、巨人は実は巨人じゃなくて。うん、そういう意味だな」 「うーん、有夏。何でも巨人で例えるのはやめようか……」  無念だ。有夏チャンはアホだった。  キメ顔が残念でならない。 「あっ、俺、明日早番なんだった。睡眠時間を確保したいから、とっとと潜入しちゃおう。ホラ、カメラ、ちゃんと付いてきてよ! この役立たず!」 「ハァ、ちゃんと撮ってますよ……」  ヘンタイメガネよ、お前は仕事を辞めてYouTuberになったんじゃなかったのかよ。  明日の出勤のことを考えてどうするんだ。  見上げた社畜だな。  何もかも本末転倒じゃねぇか、この企画。

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