183 / 365
【第16話】幾ヶ瀬Present's愛と笑いの怨念チャンネル(13)
「あ、ありかぁぁ~~~!!!」
校舎に走っていく有夏チャンの背に、幾ヶ瀬は絶叫しながら手を伸ばす。
追いかけようと数歩進むも、ヨロヨロとその場でうずくまってしまった。
どうやら足が震えて動かないようだ。
稲川淳二先生を尊敬する幾ヶ瀬にとって、夜の校舎はホラーの聖地なのだろう。
そんな様子を録画しながら、アタシはネカフェの悪夢を思い出していた。
家出した(?)有夏チャンを追いかけた幾ヶ瀬が、ネットカフェでハッスルした一件だ。
アタシも巻き込まれて大恥かいたっけな……。
それに比べたら今は周囲に人がいないから、気持ち的には楽だな。
もしも七不思議の霊がいたとしても、現実世界の人じゃないから気遣い不要だもんな。
生きてる人のほうがずっと怖い。
生きてる有夏チャン、そして生きてる幾ヶ瀬のほうがずっと怖いんだ。
「うぅぅ……、番組を成功させなくちゃ……」
震える足を引きずるように這って、校舎に近付いていくYouTuber幾ヶ瀬。
ゆっくり歩いて後を追いながら、アタシは地面を這うヤツを記録し続ける。
ヘンタイメガネよ、アンタの執念はどこからくるんだい?
ともだちにシェアしよう!