193 / 360
【第17話】『閲覧履歴に基づくおすすめ商品』は人物の内面を完全に晒す(1)
乱暴に扉が開かれた。
「ありかーっ!!」
夜中だというのに、玄関先で絶叫するのは幾ヶ瀬だ。
「有夏ぁ、俺もう仕事やめるぅ!」
「おー、おかえり。遅かったな」
PS Vitaから視線をあげて、有夏ときたら涼し気な表情だ。
そんなとこで喚いてねぇで部屋に入れよとの言葉に、幾ヶ瀬は素直に靴を脱いで駆けてきた。
小走りの勢いそのままに有夏に抱きつく。
ベッドに腰かけゲームに興じていた有夏は自然、押し倒される格好となるわけだ。
彼の上にのしかかって、幾ヶ瀬は実に情けない面である。
「俺もう疲れた。仕事辞める!」
「あぁ……」
有夏、半眼をとじた冷たい表情だ。
じっとり視線に気付いた幾ヶ瀬は、顔をあげる。
「あぁって何なの、有夏?」
「いやぁ……だって、ねぇ?」
有夏の口の端が歪められた。
繁忙期になると響き渡る「仕事辞める」「もう辞める」「明日辞める」コール。
もはや連日である。
ともだちにシェアしよう!