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【第17話】『閲覧履歴に基づくおすすめ商品』は人物の内面を完全に晒す(2)
「YouTuberは?」
「うっ……」
「『稲川淳二ファン・メガネの何言ってるか分からない怨念チャンネル』は?」
「うっ……いや、そんな名前じゃなくて。何で有夏まで俺のことメガネって呼ぶの?」
「あははっ」
「あははじゃなくて……」
がっくり落とした肩が揺れた。大きなため息をついたようだ。
YouTuberデビューはもう少し勉強してからにするよ……、幾ヶ瀬がそう呟いたのはつい先日のことだ。
廃校探訪の失敗以降、何度かホラー企画を立ち上げたものの実行に移す気力がわかなかったらしい。
YouTuberという職に安易に飛びつき、そしてあっさり諦めたわけだ。
「根気のないヤツだ」
「ううっ……」
家でゲーム三昧の有夏が言うかという話である。
今更、幾ヶ瀬がさめざめと泣いてみせても、怠け者の心はピクリとも震えないらしい。
「今朝、何時に俺が出たか分かる?」
「えっと、朝の……」
「分かんないよね。有夏、グーグー寝てたもん。腹がたったから鼻をつまんだんだけど、目が覚める気配もなし! あ、朝ご飯のおにぎり作ったの、ちゃんと食べた?」
「ん、食った食った。えっ、鼻をなに……んっ」
さりげなく唇を合わせてから、何事もなかったように幾ヶ瀬の愚痴は再開した。
「9時50分だよ、俺が出たの。入り時間ギリ! 職住近接、最ッ高! で、今何時?」
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