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【第19話】つぎのあさ(1)
きれいな顔だと思って、ずっとその寝顔を見つめている。
寝る前は不機嫌というか、茫然自失といった感じだったが、この安らかな表情といったら。
「幸せそうに寝てるよなぁ」
放っておいたらこの男、昼まで寝こけるのは分かっている。
だが、起こす気にはなれない。
薄く微笑みながらベッドの縁に手をかけて恋人を見つめる──それが幾ヶ瀬の朝イチの日課であった。
「ぅん……」
圧迫感を覚えたのだろう。
有夏の眉間が険しく寄せられた。
呼吸が早くなり、睫毛が揺れる。
これは……お目覚めだなと、幾ヶ瀬はベッドから身を引いた。
昨夜、疲労が蓄積されていたせいか、相当弾けてしまったことは覚えている。
中高、そして同棲(?)生活と、ずっと抱えていたイケナイ秘密を暴露して、なんだか今朝は心が軽い。
片思いが高じたが故のこととはいえ、人の笛や体操服を盗むというのは立派な変態による、立派な窃盗である。
申し訳ないという気持ちが心の奥にわだかまっていたのは本当だ。
「ありかーっ、おはーっ! きょうは……ぐはぁっ!」
明るい声が不意に潰れる。
有夏の掌底が幾ヶ瀬のこめかみに炸裂したのだ。
「おはーじゃねぇわ。いちいち重ぇんだよ、お前の秘密は!」
「いや、はは……」
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