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【第19話】つぎのあさ(7)

「おいしい?」  返事の代わりに有夏は幾ヶ瀬の首に腕を回した。 「おいしかったから。お礼にチューをしてやろう」 「あ、有夏?」  珍しく有夏から唇を寄せる。  反射的にキュッと目を瞑った幾ヶ瀬の首筋にやわらかなそれが触れた。 「あっ……」  唇を押し付けられたかと思うと皮膚を吸われ、幾ヶ瀬は情けない声をあげる。 「ちょ、駄目だって。有夏ぁ!」 「なんでだ?」  吸ったところに舌を這わせて、有夏は少々不満そうだ。  幾ヶ瀬が逃げ腰なのが気に入らないのだろう。 「だ、だって……」  時計を見ながら、幾ヶ瀬は恋人を引き離す。 「だって、俺もう出なきゃ。それに飲食店だからキスマークとかちょっと……まずいんだよ? だって、首にキスマなんてエロいじゃない~♡」 「なにがエロいんだよ」 「いや~、別に就業規定にキスマーク禁止ってあるわけじゃないんだけど~? でもぉ。見られたら、恥ずかしいし」  幾ヶ瀬、両手で顔を覆う。クネクネと腰をくねらせて、なにやら嬉しそうだ。

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