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【第20話】そのイタズラは正義か悪か(5)

 何日も考え抜いた復讐──いや、渾身のイタズラだったのだろう。  顔だけ布団から出し、幾ヶ瀬は嘆息する。  もう迂闊なことは言うまい。  有夏を刺激したら、何をしでかすか分からない。  アルミホイルって何だ、発想が怖いわ。  復讐だったら怖すぎるし、イタズラだったらセンスがなさすぎる。 「……でも、そんな有夏が好き」  思いが無意識に言葉に出たのだろう。  囁くように呟いた彼の背に、有夏の額がコツンとくっつく。 「あ……か、も」 「えっ、何……?」  向きを変えると、額と額がぶつかる距離で向かい合うこととなる。  有夏の頬は赤い。 「次回はもっとスゴイの考えるから!」 「次回って……」 「イタズラのネタ!」  妙な闘争心を刺激してしまったらしい。 「イタズラのつもりだったんだ。なんてタチの悪い……」  幾ヶ瀬は恋人の腰に腕を回した。 「はいはい、次を楽しみにしてるよ」 「おう」  でも寝起きはやめてねと付け足した言葉を、有夏は聞いちゃいないのだろう。  しばらくして、2人の静かな寝息が聞こえてきた。  休日の朝。ゆっくりと時を刻む。 「そのイタズラは正義か悪か」完 【予告】第21話「魔法のアイテム」につづく

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