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【第21話】魔法のアイテム(1)
「いやー、無かったわ」
玄関を開けるなり、幾ヶ瀬がため息をついた。
「なにが?」
有夏が呆れたように首を傾げるのも、まっとうな反応といえるだろう。
幾ヶ瀬はスーパー帰りであるらしく、両肩と手にエコバッグを提げている。
「今日セールだからさ。買いだめに行ったんだけど、無かったわ」
「だから、なにが?」
いい加減イライラする返事であるが、幾ヶ瀬は尚も「アレだよ、アレ」なんて言っている。
「分からん、分からん!」と怒鳴る有夏。
「アレって何だよ? どこのオバチャンだよ」
「ハロウィン仕様の袋菓子、半額になってんじゃないかと思ったんだけど、普通に2割引きだった」
「……何だよ、それ」
ああ、俺はもう半額でないとお得感を味わえない体になってしまった……なんてブツブツ言いながら、幾ヶ瀬はテーブルにバッグをおいて腕をさすり始める。
で、何買ったんだよと有夏が袋を漁る光景はいつものものだ。
大好物のビスコの大袋を見付けると、早速取り出した。
袋を破こうとする手を、幾ヶ瀬が止める。
「駄目だよ、有夏。ほっといたらお菓子ばっかり食べるんだから。今日は俺がアップルパイ焼くって言ったろ」
「ちょっとだけ! 1袋だけ!」
「いけません!」
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