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【第21話】魔法のアイテム(2)

 駄々をこねる有夏の手から袋を取り上げ、幾ヶ瀬はキッチンで購入した品物の仕分け、収納作業を始めた。 「先着200名様限定・キャベツ1玉98円! 買えてラッキー」  ご機嫌な様子で鼻歌なんて歌っている。  時間は朝の11時少し前。  2連休の初日午前を、幾ヶ瀬は朝寝と買い物に充てた。  休日は定期的にあるものの、連続で休みを貰えるのは珍しい。  ハロウィンの激務の代わりということで、今月は通常の休みのほかに2連休を2回もあるのだ。 「だからと言ってあの店長は許すまじ。どうせ12月のクリスマスシーズンでこき使うからって、機嫌とってやがんだ──ねぇ、有夏ぁ。おひる何食べたいー?」  前半は低い声で呪いを吐き、後半は猫なで声でキッチンから顔を出す。 「べつになんでもいい」 「何でもいいが一番困る……」  ぼやきながらも幾ヶ瀬、急ぎ足で部屋に入ってきた。  言葉のわりに顔が険しい。  ゲーム機を手に床に転がる有夏をまたいで、テレビの電源プラグを抜いた。  わざと大仰な身振りでコンセントを掲げるのは、だらしのない有夏の注意を引くためか。 「有夏、俺が買い物行ってる間にテレビ見てたの?」 「ちがうよ? 遊戯王のDVD見てただけ。こっちにも戦略ってものがあんだよ」  ゲームの攻略のためらしいが、幾ヶ瀬にはそんなことはどうでも良いようで。 「いや、テレビでもDVDでもいいんだけどね。見終わったらちゃんとコンセント抜いてっていつも言ってるでしょ」 「えー、めんどいー」  液晶から視線を逸らさず、有夏が口を尖らせる。

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