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【第25話】正月気分(1)

「あのねぇ、有夏さん?」  幾ヶ瀬が口を開きかけるのを笑い声が遮った。 「正月早々また小言かよ、幾ヶ瀬」  飽きねぇな──と僅かな嘲りを含んだその調子に、幾ヶ瀬が意味なく眼鏡をかけ直す。  神経質そうなその仕草から、彼が苛立っていることが窺えよう。 「正月早々、掃除なんていいだろ」  有夏が実に気楽な様子で床に転がっているのは、いつもの光景だ。  ゲーム機を片手に、もう一方の手は袋菓子の中を探っている。 「お菓子はちゃんとテーブルの上に置いて! あと、汚れた手を服で拭かない!」 「待て待て。何だって? 手を服で……?」 「服でふくー」とおどけてキャッキャッと笑う、いい歳した男。  クイックルワイパーの柄をグッと握り締める幾ヶ瀬の額が引きつった。

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