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【第25話】正月気分(2)

 その様を見て、さらに有夏が笑い声をあげる。 「有夏……」 「なに?」 「……Tシャツじゃなくジャージを着ているのは評価するよ。季節感は大事だよね」 「お、おぅ?」  予想外のコメントだったのだろう。  有夏が大きく目を見開く。  正月早々、服装をほめられたなんて喜んではいられない。  なぜならこれは高校ジャージだからだ。 「幾ヶ瀬、どした? ちょっとは正月気分を楽しみなよ」  口の中の菓子を飲みこみながら、有夏が今更ながらキャラメルコーンの袋を座卓に乗せた。 「新年早々、掃除なんていいだろ。年末に大掃除したんだし……」 「そうだね。31日は店も休みだったから、丸一日かけて家中きれいにしたもんね」  そう。狭いこの部屋も、キッチンも風呂場もトイレも完璧に磨かれている。 「うんうん」と頷く有夏。したり顔だ。  幾ヶ瀬の眼鏡がキラーンと光った。  こめかみに青筋がビシッと浮かぶ。

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