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【第29話】秘密の撮影会(7)

「有夏が言う? いや、俺の頭がおかしいのかな? 『チー』って言うとき、口が笑ってるみたいに見えるからでしょ? えっ、じゃあ『ズ』は何だ? ねぇ『ズ』は何なの……?」  何やら小さな声でブツブツ言い出した。  唇を噛みしめているのだろうか、時折プルプルと顎が震えている。 「幾ヶ瀬はこれだから困る。ときどきワケが分からない」  ヤレヤレと肩をすくめてみせた有夏。  そんな彼の前で、おもむろに幾ヶ瀬が顔をあげた。  電灯の白い光を受けて、眼鏡がペカンと光っている。  奇妙な笑顔。  これは幾ヶ瀬お得意の「現実逃避」というやつだ。 「ハイ、有夏さん。お写真お撮りしまっす。ハァイ、チーズっ♪」 「えっ、ちょっと待っ……あっ」  しかし今回、ピロンという電子音は鳴らなかった。 「有夏さん?」  呆れたように幾ヶ瀬がスマホを下ろす。

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