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【第31話】夢は売りもの(10)
「そ、それは……。でも本当に当たるかもしれないし……」
「まぁね、当たるかもね。そりゃそうだ……あははっ!」
肩の力が抜けたか、有夏が笑い出す。
「びっくりしてソンした。当たったらゲーム買ってな?」
「う、うん。マンションも買うから……」
チケット袋をしまいこんだかと思うと、今度は鞄から分譲マンションのカタログまで出した。
帰り道に不動産屋を何軒か回ったらしい。
これには、有夏もさすがに呆れた様子だ。
「やっぱ2LDKかな。だってここの家賃2軒分払うことを思えばだよ? 実際の話、ローン組んででもマンション買った方が得じゃない? 別にそんなに広くなくてもいいんだよ。その代わり、収納がいっぱいついてるとこがいいなぁ。場所は、便利でありながら自然を感じられるところ。ここはゴチャゴチャしすぎだよね。夜は静かなところがいいな。ねっ、有夏」
「うん……はぁ?」
「もう! 有夏も希望を出してよね」
「う、うん……」
1週間、幾ヶ瀬の夢は膨らみ……異様に膨らみ、そして、あえなく潰えた。
「夢は売りもの」完
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