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【第32話】最後の攻防(9)

 よもや「運動」の名目で、人のことをベッドへ引きずり込もうとしているのではないだろうかと、その頬はぴくぴくと痙攣していた。  その発想は、もはやオッサンのそれではないか。 「ささっ、有夏サン? コタツから出て一緒にヨガをしましょう!」 「はぁ?」  ドスのきいた「はぁ?」に、しかし幾ヶ瀬は気にする素振りもない。 「前から言ってるでしょ。ヨガは全身の血流をよくして、身体を温めてくれるんだよ」 「…………はぁ」  そこで幾ヶ瀬。大切なことに気付いたというように「ハッ!」と息を呑んだ。  有夏の鼻先に顔をぐいと近づけて、人差し指を振ってみせる。 「勝手にヨガれって言うのはナシだよ☆」 「うざっ!」

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