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【第32話】最後の攻防(8)

 有夏がもう一度「はっ!」と笑う。  小馬鹿にした態度に、しかし幾ヶ瀬は口元をデレデレと緩ませた。 「有夏のことは俺があたためるからっ!」  果敢にも、もう一度同じ台詞を吐く。 「ならば、どうやってあたためるのかと仰るので? 有夏サン?」  目を細め、無言で首を横に振る有夏。  一気に室温が下がったことに気付かないのか、幾ヶ瀬は満面の笑みを崩さない。 「ハイ! 運動をすることによって、自然とカラダはあたたまるのです!」 「運動…………」  有夏の目は、もはや糸のように細くなっていた。  幾ヶ瀬の謎テンション。  二人のあいだに横たわる距離感が、急速に開いていく。

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