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【第34話】夏だから…怖い話(5)

 様々な思いが交錯し、結局幾ヶ瀬は「むぅ…」と唸っただけで黙り込んでしまった。  当然ながら、有夏にその微妙な空気感が伝わっているはずもなく。  なんだか、したり顔でニヤリと笑っているではないか。 「これは近所の人たちが言ってたのを聞いたってか、聞こえたっていう話なんだけど……あ、コンビニでレジしてる時に、肉まんないのって言ってる人がいて、こんな時期にねぇわって思ったんだけど、でもあったら有夏も欲しいかなって思ったんだけど、店の人がないですって言って、その人は焼き鳥買いますって言って、その時に友だちみたいな人が来て……」 「ごめん! ちょっと、ごめん!」  頭がおかしくなりそうだ、と幾ヶ瀬は叫んだ。  話の腰を折られた有夏、整った顔を大袈裟に歪める。  いやいやいや、と大きく手を振る幾ヶ瀬。 「怖くないよ、それ! どんな怖い話だって、それじゃ…それじゃあ怖くならないよ!」

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