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【第34話】夏だから…怖い話(8)

 ボソッと呟く有夏だが、幾ヶ瀬から浴びせられる視線が急に冷たくなったのを感じたのだろう。 「まぁまぁ」と誤魔化すようにお茶をつぎ足す。 「まぁまぁ。実際1,000円するんだったら、かき氷いらないからそのお金ちょうだいよって感じだけどな?」 「有夏さ……」  色気も何もない言い草に、視線は更に冷たく凍る。 「だって、かき氷なんて結局は水……」 「信じられない! 認識が浅いってば! 今のかき氷見たら、有夏きっとビックリしちゃうよ?」 「しねぇわ。かき氷なんて水でしかないし! だから1,000円ちょうだい!」 「だからの意味が……意味が分からん! 絶対にあげないよ!」 「……1,000円あったらアイスいっぱい買えるのに」 「それを言っちゃ……」  室温が下がるにつれ、下らない会話は増えていく。  室温が下がるにつれ、互いの距離も近付いていって…。 「……も、もうちょっと設定温度を下げようかな」  リモコンを握り直す幾ヶ瀬。

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