367 / 431

【第34話】夏だから…怖い話(7)

 不服そうに黙り込む有夏。  お茶をちびちび飲みながらジロリと幾ヶ瀬を睨み付ける。 「そんな顔したって怖くないもんね。馬鹿が話す怪談は怖くないって言うけど、本当だね……でっ!」  さすがに言い過ぎたと思った時にはもう遅かった。  避ける間もない。  側頭部に張り手を喰らって、幾ヶ瀬は「ひぃ」と短い悲鳴をあげる。  ずれた眼鏡を直しながら、まぁまぁと両手を振って宥める仕草をしてみせた。 「まぁまぁ、怒んないでよ。こないだ焼き鳥作ったでしょ」 「いつの話だよ。腹立つな」 「まぁまぁ…今度かき氷でも奢るから」 「かき氷かよ」 「いやいや、有夏が想像してるかき氷っていったら夜店の100円くらいのやつでしょ。今のかき氷は違うんだよ!? 平気で1,000円越えとかするんだよ? オシャレなんだよ?」  急に饒舌に語り出したところをみれば、幾ヶ瀬自身「今のかき氷」が気になって仕方がないのだろう。 「今のかき氷って言ってる時点で、けっこうなお歳なんだよ?」

ともだちにシェアしよう!