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【第35話】冬だけど…リアル怖い話(1)

「ひぃあぁぁぁっ!」  絶叫かといえば、そうでもない。  本人は金切り声をあげたつもりなのだろうが、哀れなくらい悲鳴は掠れ、途中でかき消えた。  恐怖のあまり喉が狭まってしまったのかもしれない。  ぽかんとしてこちらを見つめる視線に気付いたか、幾ヶ瀬はもう一度悲鳴を振り絞る。 「ひぃぃぃっ!!」  チラと見やった先。  パソコンの前で胡坐をかく青年は、相変わらずポカンと口をあけたまま。 「ヒィー……? あの、有夏さん?」  ポカンとしたまま、有夏がゆっくりとこちらを向く。 「一晩寝たらやっぱり肉まんが食べたいかなって思ったんだけど、一昨年だったと思うんだけど家にいたとき姉ちゃんが肉まん作ってやるって言って、嬉しいなって思って待ってたら、冷蔵庫の中に何も入ってないけど梅干しならあるって言って、梅干し食べたらいいって言われたけど、肉まんが食べたかったから梅干しは違うなって思ったけど、食べろって言われたから食べたなぁってことを今思い出した」 「……えっ、えっ? 何て?」  今度ポカンと口を開けたのは幾ヶ瀬である。 「ま、待って。その感じ、今回も続くの?」 「今回って? その時間軸は何?」

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