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【第35話】冬だけど…リアル怖い話(8)

 やっぱり地道に働くしかないんだとユーチューバーになる夢を諦めたのも含めて、苦い思い出だ。  そんな幾ヶ瀬の前で、有夏が声を低めた。 「そうだ。あのとき屋上にいた女の人が幾ヶ瀬について来て、それでパソコンに入ったのかもしれぬ。それは……」 「それは……何?」 「それは……おまえだっ!」 「ぎゃあああっ!」  見れば有夏はケラケラと笑っている。  腹を抱え、涙を浮かべ、それはそれは笑い転げているのである。 「……有夏、今の脅かせ方は古典的すぎるよ」 「でも怖かっただろ」 「やめてよね……。また失神したらシャレにならないから」  ニヤニヤと嫌な笑みを崩さない有夏。  隙あらばまた「それは……お前だー!」とやるに違いない。  思えばコイツにはそういうところがあったと、幾ヶ瀬の表情が険しくなった。  風呂に入っているときに驚かせてきたのは何話のことであったか。

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