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【第36話】おやくそく(7)

「だ、だから、ごめ……。有夏? 有夏、落ち着いて」  幾ヶ瀬の言葉も途切れがちだ。  ごめんという声が急に裏返ったものだから、有夏は顔をしかめた。  ようやくその目に怪訝そうな、戸惑いの色が浮かぶ。  幾ヶ瀬の膝に乗って向かい合わせに座ったまま、有夏は表情を曇らせていた。  その腰にようやく腕を回してから、幾ヶ瀬は口元を歪める。  笑いを堪えている顔だと有夏はまだ気付かない。 「だ、だからごめんってば。ちょっと試しに言ってみたら、有夏どうするかなって思ってて……」 「なにが……?」 「ごめんって。てへぺろ」  今日はエイプリルフールだよンと、幾ヶ瀬は舌をペロリと出した。  瞬間。  幾ヶ瀬は頬を張られた。 「イダァッッ!?」  ガチの平手打ちに悲鳴が迸る。

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