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【第37話】春の嵐(20)

「指、何本挿れてほしい?」 「ゆびぃ?」  不満そうにぼやく有夏。 「何で? しようよぉ」 「だって有夏、掃除しなきゃ駄目じゃない」 「もういいって。姉ちゃん帰ったし」  有夏の可愛らしいこと。  自分で上着の裾をまくったまま、乳首を見せてくれている。  ガン見しそうになるのを懸命にこらえ、幾ヶ瀬は視線を逸らせた。  いかなる時でも冷静さを失わないのは俺の信条だ──何故だか幾ヶ瀬はそう自己評価している。 「学校がどうとかで忘れるとこだったよ。俺たちの前には大問題が立ちふさがってるじゃない!」 「だいもんだい?」 「掃除だよ!」と幾ヶ瀬は叫んだ。 「だって、掃除は気付いたときにしなきゃいけない。掃除を後回しにしてもロクなことない。常に掃除の必要がないくらいに掃除をしていなきゃいけない。ねぇ、そうでしょ?」 「なに、その掃除三か条は……。取り憑かれてんの?」

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