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【第37話】春の嵐(19)

 彼の前に跪き、ジャージのズボンと下着をまとめて脱がしてやる。  ずり下げる瞬間、たまらず幾ヶ瀬は「うふふっ」と笑みを零した。 「なんだよ、そのウフフってやつ」 「えっ、俺、そんなの言ってた? 怖っ、有夏のお姉さんのがうつったのかも」 「荷それ、萎えるわぁ……」 「ごめんって」  息を漏らすように笑って、有夏の後ろに指を這わす。  先程ジャージの布越しに触れた部分がピクリと震え、幾ヶ瀬の指を迎え入れようとしているのが分かった。 「……いくせは?」 「ん?」 「……脱がないのかよ」  粘膜のあたりを指の腹で撫でながら、幾ヶ瀬は「うーん」と考えるふりをする。 「うふふっ、今日は指でしてあげるよ」 「えーーーーっ」  有夏が不満の声をあげた。  有夏の姉の、裏表の激しい、妙に凄みのある、ヌーディストの(情報量が多すぎて整理がつかない)来客に心が冷えてしまったのは事実だ。  だが、萎えたモノは意識を向ければすぐに元気を取り戻すのは分かっていた。  疲れているとは言っても、服を脱げば冷静さも飛んでしまうのだって分かっている。  だから、だ。  今日は脱いではならないと思うのだ。

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