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【第37話】春の嵐(22)
「んっ……」
内部を幾ヶ瀬のそれで充たすと、息を荒げながらも有夏は微笑した。
「きもちい……」
「んん……有夏ぁ、駄目だって。そうじをぉぉぉ……」
声がうわずる。
だめだ……と、幾ヶ瀬は呟いた。
大切な「掃除三か条」が頭から消え、思考がフワフワと宙を舞い始める。
有夏が気持ち良さそうで嬉しい。
いや、俺も気持ちいいんだけど……。
有夏が腰を動かすたびに幾ヶ瀬の唇から息が漏れた。
「ありか……ありっ……んっ」
掃除のことは頭から完全に飛んでしまった。
気持ち良くて。
でも、何だか奪われたような気分で。
たまらない。春の嵐に翻弄されるのが、ただもう気持ち良くて。
例によって、翌日。
掃除地獄に幾ヶ瀬は陥ることになる。
──畳めども畳めども片付かない段ボール。
──オバケのような緩衝材。
──サボり倒す有夏。
──「イーッ!」と叫ぶ羽目になる自分。
しかし、この時の幾ヶ瀬はそんなことどうでもよかった。
だって、えっちの最中だもん。
だって、真っ最中なんだもん。
「春の嵐」完
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