419 / 431

【第37話】春の嵐(22)

「んっ……」  内部を幾ヶ瀬のそれで充たすと、息を荒げながらも有夏は微笑した。 「きもちい……」 「んん……有夏ぁ、駄目だって。そうじをぉぉぉ……」  声がうわずる。  だめだ……と、幾ヶ瀬は呟いた。  大切な「掃除三か条」が頭から消え、思考がフワフワと宙を舞い始める。  有夏が気持ち良さそうで嬉しい。  いや、俺も気持ちいいんだけど……。  有夏が腰を動かすたびに幾ヶ瀬の唇から息が漏れた。 「ありか……ありっ……んっ」  掃除のことは頭から完全に飛んでしまった。  気持ち良くて。  でも、何だか奪われたような気分で。  たまらない。春の嵐に翻弄されるのが、ただもう気持ち良くて。  例によって、翌日。  掃除地獄に幾ヶ瀬は陥ることになる。  ──畳めども畳めども片付かない段ボール。  ──オバケのような緩衝材。  ──サボり倒す有夏。  ──「イーッ!」と叫ぶ羽目になる自分。  しかし、この時の幾ヶ瀬はそんなことどうでもよかった。  だって、えっちの最中だもん。  だって、真っ最中なんだもん。 「春の嵐」完

ともだちにシェアしよう!