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【第39話】にんげんだもの(10)
「毎週買ってたのに。きっと来週になったら1等が当たって金持ちになれるんだって信じて……。そしたら仕事は辞めて、ちょっとしたマンションを買おうって思って。あと電子レンジを新調しようと思って…なのに……おーっおおーーーっっ」
号泣する男を見下ろす有夏の表情はさすがに強張っていた。
人間の本質を目の当たりにして、さしもの有夏も肝を冷やしたようだ。
「い、幾ヶ瀬に半分あげようと思って……」
「ええっ、本当にっ!?」
物凄いスピードで幾ヶ瀬が跳ね起きた。
「6億の半分っていったら3億円……十分だよ、有夏っ! ありがとう、有夏っ!」
「う、うん……」
顔面の筋肉を驚くくらい弛緩させて、幾ヶ瀬がここにきて急に躊躇った様子を見せた。
「でも悪いなぁ、3億なんて貰っちゃったら……いやぁ、悪いよぉ」
「や、悪いのはこっちなんだけど……」
「ん? 何がぁ?」
「ううん…」
有夏の表情が微妙だ。
視線をさ迷わせて、結局、部屋の隅をじっと見つめる。
目元は引きつっており、宝くじが当たった歓喜など微塵も感じられなかった。
「あの、有夏さん……?」
「うん、ごめん。何か、ごめんな……」
「あり……」
何かを悟ったのだろう。
幾ヶ瀬の、乾いた筈の目から再びブワッと涙が噴出し、眼鏡の内側を濡らした。
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