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盈月の物怪、弄月の男に廻り合う

 その後、お互い名前を教え合った。 名前も知らずに話をしとったなんて、俺ららしいちゃらしいな。 今、男を抱いて暗闇を飛行しとる。 「晴明、大丈夫か?」 心配して言うたんに、男……小坂晴明(こさかはるあき)はニヤリと笑いよる。 「今んとこな……落とさんといてや?」 素直やない晴明は憎まれ口を叩く。 「当たり前や。しっかり捕まっとれよ」 俺は抱きしめる力を強めた。 「茶色の髪って吸血鬼っぽくないなぁ」 余裕こいて俺の赤朽葉の髪を弄る晴明。 「元人間やからな」 「えっ!?」 心の臓が出そうなくらい仰天した声を上げるから、クククッと笑ってやる。 「……法螺に決まっとるがな」 「び、びっくりしたやないか!?」 面白い奴やわ。  「ああ、心満意足やな」 晴明はギュッと背中の腕の力を強めた。  俺らの楔は固く打たれた。 盈月の物怪が弄月の男に廻り合ったのは、運命やったわ。 絶対離れんし、離さんからな。                  〈完〉

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