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冬SS (3/3)
もっと大っぴらに笑い、その顔を見せてほしいと思う反面、笑われているのが自分だというなんとも言えない複雑な気持ちになる。
「なんだ、どうした」
それでもルカが笑っていることが嬉しくて、自然と頬がゆるんだ。柔らかい栗色の髪に指をもぐらせ、答えろと言うように降り積もる雪を揺すり落とす。
「いや、あんたでも嫉妬するんだな、と思って」
変わらない呼び方に一瞬眉をひそめたものの、ふと動きを止めた。
「嫉妬?」
「違うのか?」
「……いや、そうなんだろう」
嫉妬なんて、今までしたことがなかった。
だけど今はどうだろうか。
この笑い声をランツは昔から聞いていたと思うと腹立たしい。優しい表情も、帰りを歓迎してくれる言葉も、当たり前のように昔から与えられていた。共に過ごしてきた年月さえ羨ましい。
「そんな苦しそうな顔するなよ、エルベルト」
暖かい指先が頬に触れる。ルカは困ったような笑みを浮かべていた。
不意に背を伸ばし、唇を軽く合わせて囁く。
「俺はもう、お前しか見えてない」
暖かい吐息が二人の間に白い膜を張る。それが薄れて夜の闇に消えていくように、胸の中のわだかまりも呆気なく消え失せた。
「お前さえいれば、他に何もいらない」
望んだ以上の言葉にエルベルトは満たされ、愛おしく目を細める。ルカのうなじにある番の証をなぞり、ぐっと引き寄せて口付けた。
「もっとだ、ルカ」
ルカが笑ったのが唇の感触で分かる。
「いいよ、いくらでも。俺の全ては、お前のものなんだから」
その全てを明け渡すかのようにルカが自ら口を開き、エルベルトは迷うことなく中に入り込んだ。そして深く、長く、迫りくる冬の厳しい寒さなど立ち入る隙もないぐらい熱い口付けを交わした。
完
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