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夏SS (7/7)
「エルベルト? 俺はもう大丈夫だから……」
「私がこうしていたいんだ。お前が素直に悩みを打ち明けてくれたことが、何より嬉しい」
そう言ったエルベルトは本当に嬉しそうに笑った。時折見せる、無邪気な笑顔。この表情をルカは大好きだった。
愛しさに目を細め、背を伸ばして唇を合わせる。いつもはエルベルトが口付けを深めるまで待つが、今日は自ら歯列の間をくぐり、舌を絡ませた。迎え入れてくれる口から伝わるのは、依然としてただほのかに甘い味だったが、淀みのない喜びは新しく感じられて、心をどこまでも満たしていく。
その時、耳をつんざくような甲高い音が夜を切り裂いた。驚いて身構えたのも一瞬。ドンッ、と大きな音とともに、暗い空に眩しいほどの光の輪が咲いた。
「花火……?」
こんなに近くで見るのは初めてだ。
「ここにきたもう一つの理由だ。これをお前と二人で見たかった」
次々と上がる鮮やかな色の花に目を見張っているルカを、エルベルトは満足そうに眺めた。
また引き寄せられ、こめかみに唇を押し当てられる。
「誕生日おめでとう、ルカ」
今度はその言葉がすっと違和感なく胸に落ち、ルカは笑顔でエルベルトを見上げた。花火の明かりが眸の色と混ざって綺麗だ。
「エルベルトも、おめでとう」
そう声に出した時、ふと思った。
「本当に同じ日に生まれたのかもな」
不思議と、そんな気がした。運命の番だからだろうか。
エルベルトは少しも驚いた様子もなく、ただ嬉しそうに微笑んだ。
完
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