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夏SS (6/7)
誰に……? 分からない。ただ、誰かに……。
「お前自身じゃないのか」
ルカは目を見開いた。
「……俺?」
「死者や神に許しを乞うても、応えなど得られない。それはお前も分かっているはずだ。些細な喜びにさえ罪悪感を覚えるのは、お前が自分自身を許していないからではないのか」
「俺は、自分を許す立場になんてない」
「逆だ。私も悩んだ時期があったから分かる。直接手を下していなくても、私の判断や、押しきった交渉で死んでいった人々もいたからな」
「それは違う。お前はいつだって国のために――」
「お前もそうだ。大切に想う人のためにとった行動だろう」
「それは……」
そうだとしても、規模が違う。そう言おうとしたが、頬に手を添えられ、視線を絡め取られた。
「過去を悔いて立ち止まるのは簡単だ。お前がそうしたいなら私は止めない。だが過去を背負って前に進む道もある。喜びも悲しみも、苦しみも幸せも、全て受け止めて生きる道だ」
聞かなくても分かる。エルベルトが選んだのはその道だ。
自分を許すということ。それは覚悟を決めるということでもあるのか。過去を口実に「今」から――今感じていることから――目を背けない覚悟。
エルベルトの手に自分の手を重ね、ルカはそっと口にした。
「すごく、嬉しかった」
この幸せを濁そうとする後ろめたさを追いやるように瞼を閉じ、背中に回される腕に身を委ねる。
「それでいい」
ほんの小さな一歩でも、誇らしげにそう言ってくれるエルベルトに心が弾む。
「ありがとう……あ、悪い、客を待たせてるんだろう? 早く――」
気持ちが落ち着いた途端に思い出して慌てて離れようとしたが、エルベルトは腕に力をこめて動きを止めた。
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