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第15話
「一週間以上だぞ」
「わかってる、ごめんって」
恨みがましく睨みつける。濃厚なチョコレートケーキを食べながら、大輝は盛大にへそを曲げていた。
「サークルが忙しくて」
「わかってるよ」
「なら機嫌直してくれよ……」
昴流の指が大輝の口についたチョコレートを拭っていく。
筆下ろししてやると、決意してから十日間会えなかった。さすがに限界だ、とサークルに行く昴流を誘拐した。ケーキも食べれたし、昴流に文句も言えた。胸の内側のもやもやは霧散していった。
それでも機嫌悪そうな態度をとってしまうのは、ただの照れ隠しだ。
「寂しかった」
「ごめん。でも俺も寂しかった」
「メッセージぐらい返せよな」
「ごめん」
大輝が送った健気なメッセージを思い出して、昴流はちょっと笑った。
一方大輝は、チーズケーキを食べる昴流を見つめ、ごくりと唾を飲み込んでいる。口の中に咥えられるフォークと、あのねちっこい舌に弄ばれるチーズケーキが羨ましくてしかたがない。
鉛でも詰まっていたみたいに体も心も重かったのに、どうしてこんなにえっちがしたい。
「おまえも軽音サークル入れば」
「調理卒業できたら考える」
「楽器できんの」
「なんにもできない」
はは、と笑われて目を逸らした。芯の通っていない笑い声は、ベッドの中で聞く時の声とよく似ている。鎮まりたまえ、と愚息に念じた。
「大輝さあ」
昴流が呆れたようにジト目を向けてくる。煩悩がバレたんじゃないかとひやひやしたが、昴流は頭を振って言葉を濁した。
「ケーキ食べ終わったら次に行こう」
「練習行かなくていいの」
「おまえが先輩たちのところに乗り込んで『昴流ちゃんは本日お休みします!』っていったんだろ」
「そうだけど」
昴流にじいっと見つめられてみじろぎする。大輝の全てを見透かそうとするような目が落ち着かない。
次、どこにいくのかなと意識を昴流から逸らす。脳内にネオン輝くラブホが浮かんで慌てて消した。
十五分後、次、と行って連れてこられた場所の前で大輝は間抜けな顔をして立っていた。
「え?」
「えろいこと考えてたでしょ」
「いや、え?」
「バレバレだっての」
額を軽く弾かれてちょっとよろけた。
まだ夜は始まったばかりの午後五時半。いくら秋とはいえ、まだ街は明るい。
ラブホの前で突っ立っている男二人に道行く人たちが好奇心を向けてくる。
「ここ、男同士も大丈夫だから」
「ちょ、ちょっと待って」
「なに」
「ちょっとツ○ハまで。昴流ちゃん、ついてこなくていいから」
「はあ?」
「先入ってて」
困惑している昴流を置いて歩き始めた。大輝は動揺していた。まさかこんなすぐに昴流とえろいことができるとは思っていなかった。
いつでも便利道具を持っておけばよかった。準備が足りなさすぎる。浣腸と、ゴムと。頭の中でぐるぐるシュミレーションしていると、昴流が隣をぴったりついて歩いていた。
「大輝?」
「昴流ちゃんは、男同士に準備が必要なこと知ってる?」
「あっ……あー。ごめん」
頭をぽりぽり掻いている昴流を無視しているうちに、ドラッグストアの前についていた。
「どっちが男役やるか、話してなかったから、まだ最後までするつもりなかった」
「俺はしたいの」
「それはわかったけど」
「ネコは俺がやりますので」
「お、男前だね」
昴流はまだ戸惑っている。
「手伝う、から」
「そういう趣味があるんですか?」
「そういうって……」
「スカトロ的な」
「ないです」
「俺も見られたくはないので、ネットでたいへんさをお勉強して理解があればよろしいです。どうぞ先に部屋でお待ちください」
ドラックストアの前で話すことではない。昴流も大輝もまじめくさった顔で頷くと、それぞれのミッションを遂行するために互いに背を向けた。
どうしてこんなことになっているんだろうか。
大輝はラブホの硬いシーツの上で悟りを開こうとしていた。枕を抱いて横向きになっている。スキニーとパンツはきちんと畳まれて、ソファの上に置いてあった。
つまり大輝は、尻をまるっと出して横向きで寝ている。
昴流が親切心で、薬液が出てこないように菊座をティッシュで押さえていてくれるのがまたいたたまれない。
存外心配症な昴流は、大輝がひとりで準備を終えることをよしとしない。何しろ、大輝が初めて尻を使うのだと思っているからだ。
ひとり遊びしてました、と白状できないばっかりにこんな状況になっている。
白状するタイミングを見計っているうちに服は脱がされ、ベッドにころりと転がされていた。そして流れるように尻に浣腸を入れられ、思わず小学生じゃないんだぞ! と叫んでいた。
羞恥心を奥歯を噛み締めて耐えているうちに、腹痛が襲ってくる。
「トイレ行ってくる」
尻の穴をきゅっと締めて立ち上がると、昴流が心配そうな顔で見上げてくる。立派なアナニストなのでご安心を、と言いかけて引っ込めた。バレたらあとで痛い目を見るのに、恥ずかしくて言えない。いろんな羞恥心に負けて何もかも放り出したくなってくる。
「ついでにシャワーも浴びてくるから」
うん、と頷くのを確認して、トイレに飛び込んだ。ちょっと聞かれたくないような水音がする。ペッティングばかりしてきたせいで、恥ずかしがるところがちょっとずれている気がする。
シャワーを浴びながら、世の恋人がどこを恥ずかしがるのか考えてみる。キスしてる時の顔とか、寝顔とかだろうか。それとも、イッた時の顔とか。フェラしてる時のひょっとこ顔とか。
大輝は昴流の寝顔もキス顔もひょっとこ顔も愛しいから、あまり考えたことがなかった。自分のそういう表情を見せるのも。でも、浣腸してるのを見せるのはなんでか恥ずかしかった。
頭の先から爪先まで全身泡まみれにして考え込む。
これから、たぶんきっと恥ずかしいことをする。
そっ、とふくらみの間に触れる。指先を食む健気な穴。散々触り回した海綿体のかたまりを今日をここに入れる。
挿入れたらどうなるのだろう。まだ知らない奥まで、あのかたまりの温度を受け入れたら。自分で触るだけで気持ちがいい前立腺を容赦なくごりごり擦られたら。
恥ずかしがっちゃうんだろうか。この俺も。
それより俺の中でイッちゃう昴流が見たい。
女みたいに正常位で挿入れられて、昴流がえろい顔してイクのが見たい。騎乗位でもいい。
泡を流して、風呂に備え付けのローションを手にとった。穴にそっと塗り込んで、軽く広げた。これぐらいならすぐ入りそうだ。
恥ずかしい、というかなぜか緊張してきた。
この時大輝は、昴流のねちっこさをすっかり忘れていた。
シャワーから出ると、昴流はちょっと笑った。大輝がバスタオルひとつ巻かず、堂々と全裸で出てきたのが面白かったらしい。
「ごめん、待たせた」
「いいや」
ふふ、と楽しそうに笑われて肩を竦めた。
昴流の隣に座って、ぐいと顔を近づける。一瞬だけパズルのようにぴったりと合い、リップ音を立てて離れていく。
「ちょっと緊張してる?」
「うん、ちょっと」
昴流が口の端を上げて微笑んだ。昴流ちゃん、ワルイ顔してる。どきどきしながらもう一度、もう一度、とキスして、昴流の唇を割って舌を滑りこませる。口の中をぐるりとなぞり、舌と舌を絡めてきつく吸った。舌先から伝わる甘い痺れにとろける。昴流が気持ちよさそうに目を細めた。
これから、昴流ちゃんとセックスするんだ。
あれほど望んでいたのに、まだどこか遠い未来だと思っていた。実感が現実に追いついて、たまらない気持ちになる。
劣情に任せて昴流の舌を吸った。じゅるじゅる鳴る音がいやらしくて、それだけで勃ちそうになる。極めつけに昴流の手に耳を塞がれてしまう。
これ、ネットで見たエロいテクニックだ。
頭の中で水音が響いてやらしい。中で出し入れする音によく似てる。背筋がぞわぞわ甘く痺れて、胸の奥が切なくなる。
室内の空気の温度で肌が冷えていく。昴流のバスローブを脱がして、ぴっとりと肌を合わせた。体温が伝わって、もっとくっつきたくて昴流の膝に乗り上げた。
「おい?」
「さむいんだって」
「それにしてこっちは元気だな」
やんわり芯を持ったペニスを触られて、さらに硬くなる。
「ぬん」
「色気ないなあ」
十分熱くなっている昴流のものに擦りつけて、快感を拾う。
緩くしごかれて、先走りがとろりと溢れた。わかりやすくて、馴染み深い快楽に溺れそうになって、慌ててその手を払い退ける。
「今日はこっちじゃないだろ」
「がんばって準備してくれたんだもんな」
たしかにがんばった。主に知り得ない羞恥心と戦うことを。
そっと押し倒されるがまま、ベッドに沈む。昴流の手が頬を撫で、首筋を辿って、胸の飾りに触れた。きゅ、と摘んだかと思うと大輝が買ってきたローションを胸の上に垂らし始める。冷たい液体に思わず悲鳴をあげると、昴流がにやっと笑った。
この前一瞬開発しそうになりました、とは言えずに首を横に振った。
乳首の周りを指でなぞったり揉んだりしてくる。おもいきり先端を摘んで欲しいのに、昴流は楽しそうに大輝の反応を伺っている。
文句を言いそうになって唇を噛んだ。もどかしい。もどかしいのにだんだんと息が上がってきた気がする。指がちょっとかすめるだけで心臓が高鳴る。これは期待だ。昴流が早く先端を摘んでくれるのを、今か今かと待っている。
「ちょ、昴流ちゃん……」
「すぐここでイけそうだな」
きゅ、と軽く摘まれて「あっ」と甘い声が出た。いじわるされている。
もっといじわるされたいかもしれない。
「ひっぱったらもっときもちよくなれそう……です」
自己申告してみる。
「まだだめ」
一蹴されたと思ったら、反対の乳首が唇ではまれて、唾液で濡れる。
「うわ」
思わず出た声を隠すように口を手で押さえた。昴流は楽しそうに音を立てながら乳首を食んだり舐めたりしている。もちろん反対の乳首は焦らされ続けている。ときどき歯を立てられると、胸の奥がきゅぅと切なくなって昴流の口に押しつけてしまう。
乳首は本当に気持ち良くなれる。
自分で弄っていなくてよかった。感じまくっていたら、何をされていたかわからない。
もじ、と膝を擦り合わせる。足の先がシーツを掻く。股間はすっかり勃っているし、先走りがわずかに腹を汚していた。
今、引っ張ってくれたら。
昴流の後頭部を押さえた手で、髪を軽く引っ張った。
「ああぁっ」
きゅうぅ、と乳首を引っ張られて背筋がのけぞった。ぱちっと視界が弾ける。
はく、と息を飲んで気がついた。
これ、イキそうだ。
引っ張られて、噛まれて。焦らされた体はちょっとでも強い刺激に反応する。全部快感に変えようとする強欲さ。大輝が自分で呆れていると、昴流は乳首から手を離して腰を掴んだ。脇腹やへその周りにキスしたり、ときどき噛まれたりするうちに、不埒な唇は期待しすぎてとろとろのそこに行き着いた。鈴口を軽く吸うと、内腿をそっと撫でられた。
膝を立てろと無言で促されている。
なるほど、これは恥ずかしい。
いくら大輝が昴流の筆下ろしを決意してても、自ら明け渡すというのはなんとも耐えがたい。
唇を噛んで、ゆっくりと膝を立てる。ついでにちょっと足を広げて、昴流がみやすいようにしてみる。
一ヶ月手塩をかけて広げてきた。昴流が息を飲んで、そこに触れた。くちゅ、とローションが音をたてる。
思わず目をおもいきりつむった。
人に触られるって、わりと恥ずかしい。うちがわ以外はあんなに触られてきたのに。
「……?」
昴流が不思議そうな顔をして、指を奥に進めてくる。もしかして、女と比べられているのかしら。ちらりと昴流を伺うと、首を傾げている。初めて自分以外に進入され、中も戸惑っている。
「……ローションいれた?」
「いれたけど……」
「なんかずいぶん……やわらかいな?」
「ちょっとだけほぐした」
「ふうん」
納得のいかない顔で、うちがわを弄られる。肉壁は昴流の指を覚えたようで、もうすでに懐こうとしている。ちょろい。
優しく中をえぐられて思わず口を押さえた。
「んぅ……」
確認するように出し入れしたり、押されたりするうちに解れてくる。
昴流の手が馴染みあるところにあたった。
「あッ」
ハートマークでもついてそうな声に昴流が驚く。
「えっ」
「……そこ、きもちいとこ」
「え」
困惑している昴流を無視して腰をちょっと揺する。指先がとんとん、と当たるたびに声が漏れる。ぞわぞわと快感が迸って、ただの肉壁が媚肉に変わる。昴流の指をきゅん、と締めつけてしまって少しだけ照れた。
「ここ?」
「そ……」
「まだいけそう……」
指が引き抜かれ、付け足されたローションがくちゅりと音を立てる。揃えられた二本の指が入ってくる。
勃起した方がわかりやすい、と聞いたのを思い出して軽く扱く。昴流は空いている手で時々乳首を触っている。媚肉を解すのに集中している昴流がときどき噛んでいる唇をガン見する。
キスしてほしいな。
でも触るの楽しそうだな。
もやもやしていると、昴流とばちりと目が合った。
黒目がちな瞳が照明を反射して光っている。昴流が期待するように吐く息はやっぱりピンクで、大輝もつられて甘い息を吐いた。
「ちゅーしたい」
「おれも」
なんて甘い声。なんて甘い唇。
最初は優しく、ぴったりと合わせた隙間から舌を滑らせ、あっという間に舌と舌が絡んだ。吸われるたびに媚肉はほどけて、昴流の指に絡む。わかりやすくなったしこりを、二本の指が挟んで、軽く揺すると気持ち良くてたまらない。喉の奥で甘い声をあげながら、イキそうになるのを我慢していた。
「三本目、いれるよ」
「はいるから、いれて」
「……やだ。おまえのこと大事にしたい」
大輝ががむしゃらに腰を振っても、昴流はうんと言わなかった。太腿の裏に時々あたるそれが、熱く滾り、先走りを溢していることも大輝は知っていた。昴流に早く気持ち良くなって欲しいのに。
三本の指の太さを感じながら、大輝は解しておけばよかったとちょっとだけ悔やんだ。あとでひとりで開発していたことがばれたとしても、昴流ねちっこさに心がついていかない。
「あっ、やだ、んんっ」
「やっぱりまだきついよ」
広げながら、前立腺をいじられて。自分ではしない動き方で中が広げられていく。声を押さえようとした手は昴流に絡めとられ、あられもない声が無機質な室内に響いている。
焦らされて、ぐずぐずになってやっと、昴流は指を引き抜いた。血色が良くなって、ピンクに色づいた体を昴流の手が辿っていく。筋肉が弛緩して、どこもかしこもふわふわになっているような気さえする。
「えっちな色してる」
「いうな……」
体全身で気持ち良くなってます、と言っているようなものだ。
快感でひたひたにされた血液は、身体中を巡って冷める気配がない。快感を逃がそうと吐く息に甘い声が混ざってしまう。先走りなんて白濁が混ざっているし、きっと甘イキも何回かしている。
潤んだ視界の中で、昴流の長い指が先走りがしたたるそこにゴムを被せている。それ、俺がやりたかったな、とちょっぴり思った。
「はは、ガッチガチ」
自分の勃起の様子を耳元で笑いまじりに囁かれる。それだけで中がきゅん、とうねる。十分
ほぐれたふちに、熱い先端があてがわれ、それだけで甘ったるく鳴いてしまう。
「おまたせ。いれるよ」
「ん」
指とは比べものにならない質量が、熱を伴って体内を侵す。その愛しい質量を媚肉がきゅんきゅん締めつける。バイブでも届かなかった奥に先があたり、うちがわから押し出されるように声が出た。
「うわ……やばい……」
快楽と達成感でとろとろの頭はうまく働かず、ぼんやりと昴流を見上げていた。額に浮かんだ汗
と、赤く染まった目元。
嬉しくて顔がにやける。笑った拍子に溢れた唾液を、昴流が舐めとった。
「すばるちゃんのどーてー、いただき」
「そんなことかんがえてたの」
大輝の声も相当蕩けているが、昴流もなかなかだ。
指と指を絡めて手を繋ぐ。恋人らしい手の繋ぎ方が嬉しくて、指で指を締めつける。
大輝はひとりで感動して、勝手にきゅんきゅんしているが、昴流は馴染むまで動かない気だろう。媚肉は昴流の努力などお構いなしに懐いている。
「すばるちゃん、動いてだいじょーぶだよ。いっぱいほぐしてくれたでしょう」
「ん、お言葉に甘えて……」
照れくさそうに笑うと、ぬるんと腰を動かした。張った部分がしこりをひっかけるように動くと、きもちよくて骨が一本ずつ溶けていくような心地がした。
ゆっくりゆっくり引き抜かれると、出てはいけないものまで出そうなのに、突き入れられるとまた戻ってくる。それがたまらなく気持ちがいい。ぽたりと落ちてくる昴流の汗にすら感じる。この汗は快楽から滴った体液。快感を共有している証だ。
ヤリチンのくせに、快楽を追う仕草が童貞っぽい。筆下ろしは成功だ。蕩けた顔でにやにやしていると、昴流がかわいらしいキスをしてくる。
「なんか今のかわいかった」
「すばるちゃんこそ」
童貞扱いしてごめん、と心の中で謝る。同時に愛おしさが溢れて、昴流の耳たぶにキスをした。
ゆさゆさと動かれるたびにたまらない気持ちになる。せり上がる予感につられるように声はまろびでる。
突かれながら噛まれるたびに、あちらこちらが甘く痺れる。快感は五臓六腑までひたひたに染み渡り、逃げるためには頂点にたどり着くしかない。
後頭部をシーツに擦りつけながら、甘ったるく鳴いて絶頂を訴える。
「あぁッ、んっ、は、ぁっ、さき、いっちゃうっ」
「おれもいきそ……」
眉を顰めた顔がセクシーで、大輝はたまらずぎゅんぎゅんと締めつけた。昴流がたまらず突き動かした先端が、奥の奥に食い込んだ。
「ああああぁっ」
「……っぐ」
ほとばしる衝撃と、遅れてくる凄まじい快感。血液が逆向きに流れたのかと思うほどぐるぐるとめぐって、大輝を快楽のてっぺんまで連れていく。
「あっ、ん、きもち……」
涙と唾液と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で喘ぐ。強すぎる快楽は、後を引き、指の先まで甘く痺れる。腹の中でぐるぐると快楽が蟠り、自分が中でイッたことを悟った。
「たいき、イけた……?」
昴流が戸惑いながら、大輝のペニスに触れた。まだ射精に至っていないそれは、ゆるく先走りを流し続けている。
「ん、中イキした……たぶん」
自分でゆるゆる扱くと、昴流の手が重なる。
「んっ……」
とろとろと勢いのない白濁が竿を伝って陰毛を汚した。熱に浮かされている昴流は白濁を陰毛に広げている。
「えっち」
「毛に興奮したのはじめて」
もはや芯を取り戻した熱が、媚肉を撫でるように擦って抜けていく。ケバいピンク色をくるくる外して縛る手を見守ると、腹筋を使って起き上がった。
「まだまだヤれるでしょ」
「二十歳なめんなよ」
甘えるように下唇を吸って、舌をひっかける。慈しむようにそっと抱きしめられる。壊れものを触るみたいな手つきに、えろえろスイッチがオフになった。
「おまえを一生愛すると誓うよ」
「うん。俺も」
ふたりともこの縁を切ることはないだろう。そもそも大輝は昴流を離す気はない。
でも、もしいつか恋心が冷めて、セックスしなくなって、疎遠になって。憎悪が蘇って殺し合うことになっても。
誓った愛は消えることはない。
———もう前世の夢は見ないだろう。
出会うための過程は終わった。次は、ふたりで年をとるための道のりへ。
「昴流ちゃん、俺のしわ、数えてね」
「もちろん」
安いラブホの一室で。
一世一代のプロポーズが交わされた。
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