4 / 142

転機3

「奏一くんっ。この後一緒にカラオケ行かないっ?」 業後、昇降口を出たところで男女5人の集団に声をかけられた。 無言でいると、女子生徒が更に言葉を続ける。 「今から他校の子たちと合コンなんだけど、男子が1人来れなくなってさぁ〜」 化粧の濃い、やたら甘ったるい匂いのする女だ。 その匂いにより一層不快感が込み上げてくる。 俺は一人として名前も知らないというのに、何故こんな親しげに話しかけられなければならないのだ。 一刻も早くここから抜け出したかった。 合コン、ましてやカラオケなんてまっぴらだ。 「あ、そういえば!奏一くん、歌うまいんだよね!」 「…っ」 別の女子生徒がそう声を上げた。 その瞬間、ブワァッと何か黒いものが湧き上がってくる。 「あ、なんかそんな話聞いたことある!」 「すごい!聞きたい聞きたーい!」 勝手に盛り上がり出す彼らに、激しい嫌悪感を覚えた。 プチンと何かが切れる音がする。 堪え切れず目の前で交わされる会話を遮ろうとした、その時。 「わー危なーい!」 「!?」 叫び声がしたと思ったら、背中に衝撃があった。 そのまま踏ん張り切れずに落ちて来たもの共々地面に倒れ込む。 「き、木から何か降って来た!?」 「きゃぁあ!奏一くん!」 なんだ? 何が起こっている? 唇に柔らかい何かが触れていた。 状況が読めずに目を開けるも、目の前は何かに塞がれたように薄暗い。 いや、至近距離に誰かの顔がある。 「…っ!?」 いつの間にか俺は、降って来た“誰か”とキスをしていた。

ともだちにシェアしよう!