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ゆるふわ夏祭り!(1)
暑いね!とまりだよぉ。
世間様ではお盆も過ぎてそろそろ夏休みが終わるらしいけど、僕は今小説家らしく修羅場真っ只中なのです。
昨日の朝九時が締め切りだったのに、原稿まだ全然できてなくて……。てへ。
しかも伸ばしに伸ばした締め切りなの。
昨日僕んちにまで来てくれた編集の高月さんに、正直にありのままをお見せしたら、般若みたいになっちゃって。
あ、『はんにゃ』ってひらがなにすると可愛いね。甘えん坊のネコちゃんみたい。
こんな感じで、ごろにゃんって目を細めてる可愛いネコちゃん。
……いけないいけない、はんにゃちゃんを描いてる場合じゃないんだった。
般若顔の高月さんに編集部に泊まるか、ホテルに泊まるか迫られて、編集部に泊まるのはやだなーって、迷わずホテルに飛びついた結果が今なのです。
いやぁ、実は最近文芸雑誌の連載を貰いまして。
ねぇ、月刊誌に連載小説とかすごくない?
うんうん、本当に僕、小説家になったんだなぁってしみじみしちゃうよね。
しかも、締め切りに間に合わなくてホテルに缶詰めだよ!
憧れじゃん!ホテルに缶詰め!!
いかにも小説家って感じでさぁ。いやあ、ははは。
ビジホだけどね。……ふふ……。温泉旅館は僕にはまだ手が届かないよ……。
ノートパソコンのまりんちゃんと一緒に編集部近くのビジネスホテルに連れてこられて、あれよあれよという間に詰め詰めされちゃった。
そしたらビジホなのに大浴場があったから、高月さんが一回編集部に戻った隙に、思わず温まってきちゃった。
広いお風呂気持ちよかったぁー。
こんな時間だから僕一人で貸し切り状態だったし!
そんで、浴衣姿でほくほく部屋に戻ったら、高月さんが待っててさ。
鬼神のような顔で、「もう原稿できてるんですよね?」って。
できてないなんて言えないじゃん!
だから、「ちょっとできてきました」って言ったら、にょきって角生えた。
高月さん、普段は優しくてにこにこしてるお兄さんなんだけど、怒るとやっぱり怖いんだねぇ。
「輪転機止めて待っててもらってるんですからね!」って。
ほんとにあるんだねぇ、こーゆーの。
いやぁ、僕も作家先生になったんだなぁって、しみじみ感慨に耽っちゃった。
こう、腕組みしてうんうんって頷いてたら、「腕組みする暇があるなら原稿書いてください!」って怒られちゃったけど。あはは。
……はっ!
殺気を感じる!
これは、高月さんが見回りに来た?
やばやば、ちゃんとやらなきゃ。
まりんちゃん、まりんちゃんと……。
ん?
ああ、まりんちゃんていうのは僕のノートパソコンの名前だよ。
蓋のところに可愛いイルカのステッカーを貼ったの。
あ、イルカって、海豚って書くんだねぇ。
ぜんぜん豚さんに似てないのに。
まりんちゃんは水色で目がぱっちりしてて、ピンクのリボン付けてるよ!
可愛いでしょ。
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