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ゆるふわ夏祭り!(2)
……コンコン。
ひっ。
……コンコンコン。
いぃぃやぁぁぁ高月さん来ちゃったよぉ!
「とまりくん、ドア開けてくれるかな?」
やだやだやだ怖いもん!
高月さんまだ般若で角生えてるもん!絶対!
「え、えっとぉ、怒らないで、いつもみたいににこにこしてくれますか?」
「原稿が上がってれば、怒らないよ」
だだだだだ、だめだだめだ、まだできてないもん!
……コンコンコンコン。
「早く開けてくれるかな?」
ぴぎぃぃぃぃぃぃ!怖い!
あ、豚さんなのは僕だったみたい。
思わず鳴いちゃったよぉ。えへ。
は、そうじゃないそうじゃない、ド、ドアを開けなきゃ。
ごくり。
ドアを開けると角付き般若さんがスーツ着て立ってた。
「とまりくん、原稿ちょうだい?」
にっこりしてる。
「原稿」
手を出されても、ないものはないんだよぉ……!
「ま、まだちょっと……そのぉ……できて、ない、です」
ああ、変な汗かいてきちゃった。
せっかくお風呂入ったのに。
「とまりくん?」
「は、はいぃ……」
「できてないなら今すぐ書こうね、原稿」
「はい……」
大人しくまりんちゃんの前に座る僕。
は!やばやばやば、だめぇっ!
高月さんの視線の先に、ノートに書いたはんにゃちゃんが!
見ちゃだめ高月さんっ!
慌ててノートを閉じたけど、高月さんのにっこり笑顔は崩れない。
「とまりくん?」
「はいっ!」
「今のは何?」
「はんにゃちゃんであります、ッサー!」
「何だい?はんにゃちゃんって」
「可愛いねこちゃんであります、ッサー!」
敬礼!敬礼!最敬礼!!
「その可愛いはんにゃちゃんが、今回の原稿かな?」
「いえ、違うであります、ッサー!」
「じゃあ原稿はどこかな??とまりくん?」
「まだ存在しないのであります、ッサー!」
「じゃあどうしようか?」
もうにっこり笑顔がお面みたいになってるよぉ!高月さん!
そのお面の裏には、激おこ高月さんがいるんでしょ?!
「今すぐ書くのであります、ッサー!」
あああ背中が汗びっしょりなのに寒い……!寒いよぉ……!
「僕ここで座って待ってるから、ね?」
高月さんがベッドに腰を下ろした。
「原稿、今すぐ書いてくれるよね?」
「イエッサー!」
びしぃっ!と敬礼をキメて、僕は可及的速やかにまりんちゃんのキーボードを叩き始めた。
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