2 / 12

ゆるふわ夏祭り!(2)

……コンコン。 ひっ。 ……コンコンコン。 いぃぃやぁぁぁ高月さん来ちゃったよぉ! 「とまりくん、ドア開けてくれるかな?」 やだやだやだ怖いもん! 高月さんまだ般若で角生えてるもん!絶対! 「え、えっとぉ、怒らないで、いつもみたいににこにこしてくれますか?」 「原稿が上がってれば、怒らないよ」 だだだだだ、だめだだめだ、まだできてないもん! ……コンコンコンコン。 「早く開けてくれるかな?」 ぴぎぃぃぃぃぃぃ!怖い! あ、豚さんなのは僕だったみたい。 思わず鳴いちゃったよぉ。えへ。 は、そうじゃないそうじゃない、ド、ドアを開けなきゃ。 ごくり。 ドアを開けると角付き般若さんがスーツ着て立ってた。 「とまりくん、原稿ちょうだい?」 にっこりしてる。 「原稿」 手を出されても、ないものはないんだよぉ……! 「ま、まだちょっと……そのぉ……できて、ない、です」 ああ、変な汗かいてきちゃった。 せっかくお風呂入ったのに。 「とまりくん?」 「は、はいぃ……」 「できてないなら今すぐ書こうね、原稿」 「はい……」 大人しくまりんちゃんの前に座る僕。 は!やばやばやば、だめぇっ! 高月さんの視線の先に、ノートに書いたはんにゃちゃんが! 見ちゃだめ高月さんっ! 慌ててノートを閉じたけど、高月さんのにっこり笑顔は崩れない。 「とまりくん?」 「はいっ!」 「今のは何?」 「はんにゃちゃんであります、ッサー!」 「何だい?はんにゃちゃんって」 「可愛いねこちゃんであります、ッサー!」 敬礼!敬礼!最敬礼!! 「その可愛いはんにゃちゃんが、今回の原稿かな?」 「いえ、違うであります、ッサー!」 「じゃあ原稿はどこかな??とまりくん?」 「まだ存在しないのであります、ッサー!」 「じゃあどうしようか?」 もうにっこり笑顔がお面みたいになってるよぉ!高月さん! そのお面の裏には、激おこ高月さんがいるんでしょ?! 「今すぐ書くのであります、ッサー!」 あああ背中が汗びっしょりなのに寒い……!寒いよぉ……! 「僕ここで座って待ってるから、ね?」 高月さんがベッドに腰を下ろした。 「原稿、今すぐ書いてくれるよね?」 「イエッサー!」 びしぃっ!と敬礼をキメて、僕は可及的速やかにまりんちゃんのキーボードを叩き始めた。

ともだちにシェアしよう!