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明けない夜はない★

「おい、戻ってこい」  そう言われてはっと我に返る。 「どっか行っとったぞ」 「あん時のこと思い出しててん」 「……そうか」 「おん……。あれ、5年とかそれくらい前やったよな」 「そうやな」 「早いよな」  有がシャワーを止めた。 「よし。ヒロ、出よか」 「おん。やけど、その前にここでイチャイチャしよ」 「はあ?? まだヤる気なん?? もうあかん言うたやんっ」 「もう挿れへんから。ちょっとぐらいええやん。俺、まだおさまらへん。今日、久しぶりやったし」 「もう……」  大貴はそれを肯定の返事と勝手に都合良く捉え、有を浴槽の壁に押しつけた。速攻で唇を奪う。 「ん……」  すぐに有が声を上げ始めた。舌を絡ませ合いながら、有の胸の突起を優しく弄くる。創造の有と唯一一緒だったのは。現実の有も胸の感度はかなり良かったことだった。有の手がすっと伸びてきて、大貴のすでに固くなっている自身を優しく掴んだ。唇を貪りながら、薄らと目を開けると有と目が合った。その瞬間に有に強く大貴の自身を扱かれて、思わず大貴は声を漏らした。 「んっ…… 「ヒロ……」 「ん?」 「ヒロのここ、いっぱい愛して欲しいん?」 「……どうしたん? 有……急に」  普段、運動競技のような意気込みでセックスをする有とは思えない、甘い言葉だった。ふふっと、有が笑う。 「ちょお、言うてみたくなってん」 「……なにそれ」 「ええやん、たまには。なあ、ヒロ、答えてや。ここ、俺のお口で気持ちようして欲しいん?」 「……はい、まあ……」 「なんやねん、ちゃんとおねだりせえへんと、してあげへんで」  ちょっと拗ねたように頬を膨らます有を凝視する。  可愛い過ぎる。  こんな有が見られるなら。別に、大貴の思い通りにならなくてもいい。むしろ、大貴を振り回して欲しい。そこまで思う。それは、昔の自分からしたらあり得ないことだったけど。  人生、何が起こるか分からないから面白いのだろう。そんな人生を目の前のこの男と歩んでいけるなら。例えどんな暗闇の世界でも。眩しいくらいに明るくしてみせる。  やって。有と一緒やったら。  大貴は少しだけ微笑んで、それから軽く有の額にキスを落とした。じっと、有の瞳を覗く。 「有の口でいっぱい気持ちようしてくれる? 俺の頭ん中、有でいっぱいにして?」  まあ、もう有さんで満員御礼になってますけど。  有はふふふと嬉しそうに笑うと、体ごと下に降りていった。大貴はその気配を感じながら、ゆっくりと目を閉じた。  そう。有と一緒やったら。  明けない夜などないのだから。 【完】

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