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おまけSS巣作り編

『おまけSS浅井くんの巣作り編』 side α 発情期が近い番を持つΩは時折“巣作り”を行う。番のαの匂いを集め、その中で愛しいαを迎えようとするΩの習性らしい。 「…………そろそろか」 俺と宗一の休みが重なる週末。いつもは早くに起きて朝食を準備している宗一が珍しくベッドから出てこなかった。 声を掛けても何処か上の空。 周期的に発情期が近いしその影響だろうとすぐに推測はついた。 昼過ぎになってベッドから出てきた宗一は俺の所に繰り返しやって来ては、身につけている物を欲しがった。 三回目の着替えで、もしかしたらこれはと巣作りの可能性に気が付いた。 今まで見た事もないし、巣作りなんて知識として知っている程度。 どんなものなのかと寝室に近付いたら「まだだめ!」と泣きながら怒られたので大人しくリビングで待つ事に。 夕方になって物を強請られる事はなくなり、更に時間の経過をじっと待つ。 もう間もなく日付が変わる。 座っていたソファーから腰を上げて寝室のドアの前から中へと声を掛けた。 「宗一、もう入ってもいいか?」 「んー……あのね、俺のスマホ持ってきてほしい」 スマホ……そう言えばリビングのテーブルに置いてあったなと一度取りに戻って、再び寝室のドアの前に立つ。 「開けるぞ」 さっきは泣かれたから慎重にとゆっくりドアを開けた。 ベッドの上には山積みになった俺の服。 宗一の姿が見えないけれど、恐らく服の中に隠れているんだろう。 近付けば微かにフェロモンを感じる。やっぱり発情期が近いみたいだ。 「スマホ持ってきたぞ」 俺の声に服の山がビクッと反応を見せて、次の瞬間にはありがとうと嬉しそうに宗一が顔を覗かせた。 俺からスマホを受け取って何をするのかと宗一の動向を見守る。 手帳型のスマホカバーから小さな紙を取り出して本体はベッドへと放ってしまった。 「えへへ、これで完成」 嬉しそうに告げてくる宗一の手にある小さな紙には見覚えがある。俺が覚えていた姿からはかなりボロボロになってしまっているけど、昔一緒に出掛けた時に買ってやったクッキーに付いてきたと言うおまけのシール。 描かれた不細工なウサギはすっかり色褪せてしまってる。それなのに宗一はそれを大切そうに握り締めていた。 「…………それ、まだ持ってたんだな」 「ふふ、初デート記念だもん。俺の宝物」 もっとマシなもの買ってやれよと過去の自分を殴りたくなってくる。 「ね、巣はどう?これで完成なんだ」 「凄く魅力的だ。俺も入らせてくれる?」 「うん!もちろん!」 宗一はあの頃から何も変わらない。 ずっと一途に俺だけを好きだと言う。 だからきっと俺が宗一以上の時間を取り戻す事なんて出来ないんだろう。 だからせめて今と、これからは負けないぐらいの気持ちを返したい。 「今年の宗一の誕生日さ、またあそこでデートしよっか」 「いいの!?」 「うん、俺がしたいから。そしたらさ今度は――」 【END】

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