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SS_嫉妬1
side α
両手を合わせた俺にポカンと口を開けた宗一は、次の瞬間には取り繕うように笑った。
「だ、大丈夫!まだ材料とか買ってないし、セーフ!セーフ!」
「けど……」
「大丈夫だって。それも仕事のうちなんだし、気にしなくていいよ」
「…………」
絶対無理してんな……。そりゃそうか、張り切ってたもんな。
お風呂入ると立ち去っていく背中を見ながら、俺は肩を落とした。
今週の金曜日は俺の誕生日で、同棲して初めての事だからと宗一はそれはそれは張り切っていた。
俺の好きなものばかり作りたいと沢山リクエストをメモなんかしてまで。
それなのに前日である今日、上司から告げられた突然の飲み会参加。断りを入れたものの、聞く耳を持ってもらえなかった。新人の俺が強く言えるわけもなく、結局帰って一番に宗一へ頭を下げることになった訳だ。
何も今週じゃなくたっていいだろ、飲み会。
くそ…………またあんな顔させちまった……。
自己嫌悪にソファーに項垂れ、いっそ体調不良だとか言って休んでやろうかと頭を掠める。
だけど宗一がそれを喜ばない事も理解してる。
飲みの席だって仕事と同じだ。人脈を作る事は今後に繋がっていく。
早く出世して宗一を養っていきたいと思っている俺にとって、大事な機会だと分かってはいるんだ。
いるんだが……。
「ああ、くそ…………休みてーな……」
「――それは、だめ」
「――!……宗一、早かったな」
「結構時間経ってるけど……」
バスタオルで濡れた髪を拭きながら、宗一は俺の隣へと腰掛けた。
「……俺が拭いていい?」
「…………うん」
恥ずかしそうにしながらも俺に身を委ねてくれる宗一。
相変わらず顔は真っ赤だけど、以前よりは少しだけ触れ合う事に慣れてくれたように思う。
嬉しい変化だよな、こう言うの。
「……明日、なるべく早く帰るから。本当にごめんな」
「ん?そんなに気にしなくて大丈夫だから。その代わり土曜日、たくさんお祝いしたい!だめ?」
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