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④監視が強化されたんですけど ─雷─10※
──なんでだ!
なんでこんな事になってんだ!?
「ぅ、……っ、……迅、ッ……迅んん……♡」
「はいはい、そんな何回も名前呼ぶなって。 ここがどこだか分かってんの?」
どこだか分かってんのかって……さっき俺達が居た秘密基地の上の階にある男子トイレ。
お世辞にもキレイとは言えねぇ、狭い個室ですよ。
ぶつくさぼやきながら帰って行った翼を見送ってすぐ、食べかけのボッキーを取り上げられた俺は、迅から腕を引っ張られてここに連れ込まれた。
何だ何だ!と暴れてはみたけど、個室に連れ込み慣れてる迅には敵わない。
「ンンッ……、んーッ!」
「誘ったのはお前だからな、雷にゃん」
「ふぇッ? あ、っ………んぁ……ッ」
ベロ入りのキスを仕掛けながら、俺のベルトをカチャカチャと外してる迅は器用だ。
遠慮なく俺のチン○を握った迅は、ポケットから何かを取り出して指先の感覚だけでそれの封を切った。
"それ" は……コンドームだった。
いやらしいキスでムラムラした俺のチン○が精液を撒き散らさねぇようになんだろうけど、俺は、こんな時にそんな理由で生まれて初めてそれを装着された。
「家まで待てなかったの」
「ふぁ……ッ♡ い、いやそれはお前だろ! なんで俺のせいになってんだ!」
「トロ顔すっから合図出されてんのかと」
「だーかーらー、そのトロ顔ってどういう……ぅぅん……ッ♡」
「声抑えろ」
「ふぅ、ん……ッ、ンンっ……♡」
俺が迅のブレザー越しに腕を握ると、チン○をやわやわと扱かれて声なんて抑えらんなかった。
俺に聞こえるように迅はわざと音立ててる。 ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅ。
俺の口の中を自由に舐めてくる迅のベロには、まるで意思があるみたいだ。
ぬるっとしてて、あったかくて、迅が噛んでたライムミントのガムの味が俺のベロにも移っていく。
や、やば、……ッ、唾液ってどうしたらいいんだ……っ。
こんなに長くベロチューされた事ねぇから、口の端から垂れそうなのにどうすればいいのか分かんねぇよ……!
「ンッ、んーん、んーん、ッ!」
「……イけ」
「んぅッッ……むぅぅ……──ッッ♡」
そんなにシコシコされてない、のに。
なんだかよく分かんねぇうちに、トドメのイケボでイった。
よだれは結局、どうしたらいいかって慌てる前に迅が舐めてた。 どっちのかも分かんねぇのに……やらしいヤツだ。
「はぁ、はぁ、……お前、マジで信じらんねぇ……ついに学校でとか……」
「お前が誘うからな」
「誘ってねぇってば!!」
「ゴム取るぞ」
「……うぅッ……恥ずか死ぬ……ブカブカなのが切ねえ……。 てかそれ持ち歩いてるとこがさすがだよな、……ヤリ迅」
「二ヶ月使ってねぇけどな」
「……俺のこと束バッキーすんのに忙しいからだろ。 そろそろ彼女作れば?」
「お前がそれを言うんだ。 っつーかなんで俺が雷にゃんを束バッキーしてる事になってんの? 腹立つ」
「はぁ!? もう、迅の怒りポイントマジで謎! どう考えても……ッ」
「キスしたら直るけど」
「いっ!? そ、それは今いっぱいしたじゃん!」
「雷にゃんからしてくれたら機嫌直る」
「………………」
急に末っ子の駄々っ子バージョンかよ。
俺にはブカブカだった精液入りのゴムをペーパーでくるんで、ムスコまでキレイキレイにしてくれた迅が、またご機嫌ナナメ。
しかもキ、キスしたら直るってどういう理屈?
「やっぱ家族より長い時間を一緒に過ごす上では、相手とギスギスすんのって良くねぇ事だと思うんだよ。 雷にゃんは、俺がずーっと不機嫌なままでいていいのか? 嫌だろ?」
「それは……嫌、だけど」
「決まりな」
「ど、どうしたらいいんだよ……ッ」
「背伸びしろ」
「これが限界なんだっつの! 嫌味か!!」
「しょうがねぇな、チビ」
「うるせ、……えぇぇッッ? ちょっ、抱っこ軽々だなぁ、おい!」
「俺の方が雷にゃんより二十七センチ高いからな」
「ぐぬぬぅぅぅッッ! 嫌味コンチクショー!!」
「俺は叫べとは一言も言ってねぇ。 キスの仕方くらいもう分かんだろ、雷にゃん?」
「うッ……イケボは卑怯だぞ……ッ」
いつでもどこでもどんな時でも、そのイケボはめちゃめちゃハイスペックな武器だ。
爪先立ちしても、とてもじゃねぇけど迅の望みは叶えてやれそうになかったからって抱っこする事はねぇだろ。
狭い個室で、エロ漫画みたいなシチュエーションで、カレカノでも無え俺たちはどう考えてもおかしな事してるぞ?
でもイケボが「キスしろ」って言った。 迅にその気があるのか分かんねぇが、そうしなきゃなんねぇような気になる。
だから俺は、末っ子駄々っ子の機嫌を直すために……緊張してカチカチになった唇を迅のほっぺたにあてた。
がんばった。
俺、めちゃめちゃがんばった。
「……これだけ?」
「これだけ!! 忘れてっかもしんねぇけど、俺は童貞男子なんだよッ。 すげぇがんばった方だ!」
「………………」
「……機嫌は? ……直ったのかよ」
「いいや、全然」
「はぁぁッ? 全然、だぁ? 俺の頑張りを無駄にしやがっ……むぅッ♡ ん、ッ……んっ……ンン……ッ♡」
コイツ……ッッ!!
俺のがんばりを無駄にしたあげく、さっきの続きとばかりにベロで口の中を犯しやがった。
これダメだ、頭がぽーってなる。
ちゅっ、ちゅって聞こえるのは、唾液の音? 俺がベロに感じるあったかさと同じタイミングだから、またムラムラしちまいそうなんですけど?
苦しくてドキっとするこのいやらしいキスを、何分も平然とやってのける迅はやっぱりヤリ迅だ。
「このくらいしてもらわねぇと。 俺を誰だと思ってんの?」
「…………性悪デカチンヤリチン性欲モンスター」
「ほぉ? まだそんな口が叩けんの」
「あ、ウソウソ! ごめ、……ンンッ……!」
雷にゃんのカワイイ冗談じゃん!!
抱っこのまま、般若ツラでジロッと睨まれた俺が光の速さで謝ったってのに、また口の中がライムミントの味でいっぱいになった。
マジで迅の野郎、……キス魔ってやつじゃねぇの?
「迅……さてはお前、これが隠し持ってた性癖だな?」
「なんの話?」
「こんな……こんないたいけな童貞にもベロベロちゅーしまくってんだ。 今までの彼女達にも相当……」
「雷にゃんの口からそういう話は聞きたくねぇ。 帰るぞ」
「あ、えっ? 待てよ! ……また怒ったのかッ?」
俺の推理の途中から、抱っこをやめた迅がスンッと表情を失くした。
精液入りペーパーをゴミ箱に放って、廊下に放置してた薄っぺらい鞄を脇に挟んで一人でスタスタ帰ってく。
その背中を、俺は慌てて追い掛けた。
ったく……怒りの沸点が分かんねぇ末っ子の扱いはさっぱり分かんねぇや。
「おい迅っ、待てよーッ!」
「……チーズ倍乗せすんだろ」
「あッッ♡ そうだった! 性欲キス魔モンスターにあんなとこ連れ込まれっから忘れてたじゃん! チーズチーズ♡」
「………………」
一発抜いてスッキリな俺は、夢の倍チーズを思い出させてくれた迅を見上げて、ヘラッと笑って見せた。
めったに笑わねぇ迅の優しいツラを期待してそうしてみたんだけど……。
返ってきたのは、「夜は覚えてろよ、童貞男子」というおっそろしい台詞とヤリチン面だった。
……そうだ。 俺だけスッキリして迅は抜いてないんだっけ。
そりゃキレるよな。
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