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⑥判明したんですけど ─雷─④

 頭ン中で警報が鳴りっぱなしでうるさかった。  ムカつく。 マジでムカつく。  見境のない黒豹に進化した性欲モンスターが、シチュエーションにあてられて我慢出来なくなって、チビでかっこいい俺を女の代わりにしてる。  俺の行動に目を光らせる監視人だけじゃ飽き足らず、体までどうにかしようとするヤリチンの考えがまるで分かんねぇ。  何が一番ムカつくって、「イかせてほしい」、「意地悪言ってねぇで早くチン○に触れ」とねだってしまいそうになった、明らかに流されてる俺自身。  捕えたちくびから離れない迅がずっとベロを動かしてくるから、訂正された四つの事なんかもう忘れた。  やめろって言ってる自分の声が甘々でエロくて、正気で居るのが恥ずかしくてたまんねぇ。 「背中ビクつかせてんじゃん。 歯あてただけでガン勃ち」 「ちくび……っ、俺のちくび、取れてねぇ!? 噛むのはナシだろぉ!」 「さっきから取れる心配し過ぎ。 雷にゃんの乳首は着脱可能なの」 「ちゃ、ッ? ちゃく、だつ? なに……?」 「いや何でもねぇ。 難しいよな、ごめんな? 雷にゃんはそのバカなとこがいい。 そこが可愛い」 「カッ……! 迅、それやめろよ!」 「乳首?」 「違ぁぁう!! あッ、違わねぇけど! 可愛い可愛い言うのもやめろっつってんの!」  顔を上げたヤリチンのセクシーオーラがハンパじゃなかった。  迅の野郎……いつもこんなツラして女を攻めてんのか。 裸に剥かれた女なら、誰しもが「今すぐ抱いて♡」と口走っちまいそうな、まるで同い年には見えねぇ伝説保持者の風格。  このシチュエーションを盛り上げるための「可愛い」という言葉にまで、魔法がかかってる気がする。  だからって今日は言い過ぎだと思うけど。 「俺の言論の自由を奪うのか」 「な、なにッ? ゲンゴロウノジユウ?」 「この状況で言葉を遮るな。 これでも俺、我慢しまくってんだぞ」 「はぁッ!? 何が我慢だ! ここまでやっといて!」  俺のちくびを飴玉にしてペロペロして、あげくの果にはカリッと歯まで立ててきた迅が、どこをどう我慢してたって言うんだ。  磨き上げられた上級キスのテクニックで俺をメロメロにさせて、あとは体丸ごと〝いただきます、ジュルッ〟状態だったじゃん。  抱き寄せられて力の差を見せつけられても、俺にはまだ抵抗する意思だけはちゃんとあるんだ。  意思だけは、……! 「そんじゃあ、雷にゃんのこのチン○どう説明すんだよ」 「うっ……!」 「触ってもいねぇうちからこんなおっ勃てて、パンツに染み作ってるヤツの言う事じゃねぇだろ。 意地張ってねぇで素直になれって」 「うぅぅ! うるせぇ!! 触ってくんねぇんなら自分でヤるから、もう離せよ!」 「イヤ」 「こんの……ッ、馬鹿力……! 離せッ、離せってば!!」  勃ってる俺が悪いみたいな流れになってる! なんでだ!  こうなっちまったのは全部ヤリ迅のせいなのに、童貞男子を揶揄って満足そうに唇舐めてこないでほしい。  俺は気付かないフリしてたんだ。 膨張率がそんなでも、一応俺のチン○だってパンツが窮屈にもなる。  諸々の原因を作った迅には、言われたくなかった。  誰のせいでこうなってると思ってんだ。  いつもより濃厚な大会になってるのは、俺が暴れようが何しようが押さえ付けて、やたらと密着したがる迅が性欲爆発間近だからだろ? 「はぁ……。 雷にゃん、乳首克服出来そうなのに諦めるんだ? 雷にゃんってそんな意気地無しだったんだなー」 「い、いっ、意気地無しだとぉぉ!?」 「まんまそうじゃん。 どう見ても……なのに、素直にそうだって認めねぇ意気地無し。 勝負はとっくについてるってのに」 「勝負……ッ? ンなのしてたつもりねぇよ!」 「触ってほしいっつってケツぷりぷりさせて、イきてぇの我慢してんのは結構だけどな。 俺を納得させる説明出来なかった時点で雷にゃんは負け確なんだよ」 「…………ッッ」  どういう理屈……ッ? そもそも俺、迅と勝負してたのか? ……なんの?  さっぱり意味が分からねぇけど、意気地無しとか負け確とか言われるとさすがにカッと頭に血が上った。 「ぐぬぅぅ〜〜ッッ! 迅は俺になんて言ってほしいんだよ! 俺は自分の気持ち言ったはずだろッ? なんで迅は納得してねぇのッ?」 「〝乳首気持ちいい〟って言えば済む」 「ギっ……!?」  結局それかよ! うっかり変な声出ちまったじゃん!!  俺は涙ながらに訴えたはずだ。  ちくびをもてあそばれると女の代わりにされてる気になる、チビだけど女じゃねぇから代替機扱いしないでくれ、って。  その上、平べったいおっぱい見せて覚醒させようとしたのに、逆に性欲モンスターに火を付けちまって失敗に終わった。  見せ損だ。 ほんっとにムカつく。  元気に勃ってた俺のチン○がふんにゃりなってんの、迅は気付いてる?  女を落としてきたテクニックを、童貞男子にひけらかしたいのは分かった。  でもさ、俺を巻き込むのはいい加減やめてくれよ。  迅の胸筋で鼻が潰れそうなほど、力いっぱい抱きしめてくんなよ。  俺が迅の声に弱えの知ってるくせに、「雷にゃん」ってあえて耳にチューしながらイケボで囁くなよ。 「俺は雷にゃんを女の代わりだと思ったこと無ぇよ。 こうやって触んのも、キスすんのも、俺の目の届くとこに居てほしいのも、雷にゃんだからだ。 雷にゃんだから、俺のそばに置いてる」 「……お、俺、だから……?」 「そう。 今言ったこと、深読みするなよ。 そのまま受け取れ」 「…………ッ?」 「少ねぇ脳細胞でアレコレ考えると、雷にゃんはロクな結論導き出さねぇだろうから」 「なっ!? お前それ俺のことめちゃめちゃバカに……ッッ、んっ♡」  ドキドキしながら顔を上げたそこで、迅の唇がすでに待機していた。  二つの唇が重なった瞬間、もっと強い力でぎゅぎゅっと抱きしめられて息が止まる。  〝雷にゃんだから〟……。  深読みするなって言われたから、そこは従って考えないでおく。 ってより、考えられない。  だって……俺の勘違いじゃなければ、代替機説は無しっぽくてむしろ……ちょっとカレカノ要素含まれてねぇ?  ちゅっと触れるだけのキスを何秒かしてる間ずっと、心臓が痛てぇんだけど。  深く考えてねぇのに、頭ン中が少しずつ空っぽになってくんだけど。  俺、これ以上バカになったらいよいよ困るんですけど。

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