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⑫ツンデレ彼氏が甘々なんですけど ─雷─②

 一回吹き出して笑いをこらえた黒豹は、広いクイーンサイズのベッドの中央に俺を運びながら怒った。 「何言い出すかと思ったらそんな事かよ!」 「あッ? エッ? なでなでギュ〜ッは?」 「は!?」  えぇ……ッ、俺も「は!?」なんだけど!  予備知識を頭に叩き込んで今日をワクワク待ちわびてた俺は、褒められるとばっかり思ってた。  笑われた上に怒られるとか聞いてない。  一週間この日のためにテス勉より集中してたのに……ちぇっ。  迅のツラを恨みを込めて睨むと、「ったく……」と呟いて溜め息を吐かれた。 「なでなで、ぎゅ、してほしいの」 「……してほしい。 全雷にゃんが望んでる」  分かりきったことをわざわざ言わせる迅は、意地悪だ。  でも俺もめちゃめちゃめんどくせぇ女みたいで、自分で自分がキモい。  迅の前だと俺は、キモ発言とキモ行動が止まらねぇ。  この程度でプイッといじけた俺に、迅は一回だって「キモい」って言わねぇから調子に乗ってしまう。  だってな、……笑う、怒る、溜め息のトリプルコンボをかましてきたくせに、大きな手が俺の頭をなでなでしてきたんだ。  俺が望んでるって言ったから。 「どんだけだよ。 ……ほら」 「いや、してくれんのかよぉ♡ ンフッ♡ 俺さぁ、迅になでなでしてもらうの好きなんだよ〜! マジで猫様の気持ちが分かる! これはゴロにゃんだぜ♡」 「……お前、可愛くて良かったな」 「俺の言ったことを行動しちまうツンデレ変態はお前だぞ、迅♡」 「………………」  なでなで〜からのギュッをしてもらえた俺は、ニマニマしながら迅の背中に腕を回した。  俺も一応、迅と同じ性別のはずなんだけどな。  どうやったらこんなにデカくなれるんだろ。  迅に抱き締められたらマジで、俺の体はすっぽり抱かれてしまう。  迅はこれが好きだって言ってたし、自分でチビヒョロなの肯定したくはねぇんだが……ま、いっか♡ 「フェラって、雷にゃんが俺に? 俺が雷にゃんに?」  一つ聞きてぇんだけど、と前置きした迅が、当たり前のことを聞いてきた。  ニマニマの途中で超ヘンなツラしてただろう俺は、顔を上げて予備知識をひけらかす。 「何言ってんだ、俺が迅の迅様をペロペロすんだよ!」 「……出来んの?」 「知らね! 動画ではモザイクかかってて、何やってるか全然分かんねぇんだよなー。 迅、俺初心者マーク付いてっから、舐め方教えて?」 「…………ッッ」 「おい〜!? また吐血!?」  今日何回そのオーバーリアクションするつもりなんだ。  俺の前では童貞男子と変わんねぇと豪語した迅は、少なくともこういう場数には慣れてるはずだろ。  とても俺には想像もつかねぇくらいペロペロされてきた迅なら、モザイクで隠されてたところも知ってると思ったから聞いただけで……って、ウッ……チクチク再稼働。  ヤリ迅ムカつく。 そこは考えるな、俺。  迅は今、なんてことない俺の発言にいちいち吐血するぐらい雷にゃんラブなんだぞ。  俺が「して」って言う前から、ギュッてしてくれるようになったんだぞ。 「無自覚怖え……俺絶対早死にするわ」 「えッ、早死にする!? ヤダ!! 死ぬなよ! お前マッキーペンまだ治んねぇのか!?」 「あぁ……そんなこと言ってた時もあったな。 マッキーペンなら絶賛進行中だ。 雷にゃんと居る限り完治は見込めねぇ」 「そんな……ッッ!? お、俺、迅のために身を引くよ! 迅が死ぬなんてヤダよ!! うッ……!」  なんてこった!! 吐血の原因はそれじゃねぇのか!?  迅の体ン中で何が起こってんのか知らねぇけど、俺のせいで早死にするなんてヤダよ!  一緒には居られない!とドラマばりに言い放って、焦ってベッドを降りようとした。 「おい、一人で突っ走るな」 「だ、だって迅が……ッ!」  お腹に精液をベッタリ塗られたままなのに、躊躇なく迅は俺のことを抱きしめる。  落ち着け、と背中を撫でてくる手が優しい。  大好きなイケボが耳に心地よくて、単純回路で成り立ってる俺の脳が素直に喜んだ。  それと同時に、またやっちまったと後悔する。  迅が高度なデレを発揮してくるから、聞いたままを直に受け止めちまう俺はこうやっていっつも勝手に振り回されるんだ。 「あーまた話が脱線・飛躍してんな。 てかフェラしてぇならしろよ。 マッキーペンでちょっと萎えたから勃たせて」 「た、たっ、勃た……ッ」  いやそんな、迅さん。 気を取り直すのが早えよ。  俺は迅みてぇに場数踏んでねぇから、ていうか正真正銘の童貞男子なんだから、ダイレクトに俺様迅様が登場されても困る。 「〝大好きな人のチン○をペロペロするのは最高の喜びで、しかも性交するにあたってのルールでもある〟んだろ?」 「そ、そうだ! つまり俺の喜び! 俺得!」  言い出しっぺの俺が引いてる場合じゃなかった。  まだタオルに隠されてるそこを、俺は今からペロペロしなきゃいけない。  何しろこれは俺に課された難題かつ、世間一般の性交ルール。  迅が足を広げた間に、俺はいそいそと四つん這いになった。 「まさか童貞処女に初回から咥えてもらえるとは思わなかった」 「ん……? 咥え……? 舐めるだけじゃねぇのか?」 「そんなんで済むかよ」 「えッ!?」  ゴクッと生唾を飲んで、迅の腰に巻かれたタオルに手をかけようとしたその時、新たな情報が飛び込んできた。  それがホントなら、俺の教科書だったモザイクの内側では〝パクッ〟もあったってこと……? マジ……?  俺はてっきり、ペロペロだけだと思ってた。  そんなんで済むかよって当然のようにイケメン笑顔を返された衝撃が、ヤリチンに伝わったかは分かんねぇ。  でもよ、だってよ、まず標準サイズを知らねぇ俺だけど、迅の迅様は多分……規格外じゃありません?

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