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⑮勝負 ─迅─②
立ちっぱで可哀想だと思いつつ、何にも用意してねぇしラブホでもねぇここじゃ、ベッドでのレッスンは無理だった。
ここに来るまでに調達してくりゃ良かったんだが、とにかく一刻も早く雷をとっ捕まえて「俺から逃げるなバカ野郎」とキレてやりたかった。
追跡アプリを起動させながら、電車ン中で雷の親に連絡入れて外泊許可取って、駅にコンビニも無ぇド田舎に到着。
潜伏先のファミレスには、なぜか束バッキー野郎が居たんでさらにムカついた。
俺からは逃げるくせにソイツとは楽しくディナー中ってか。……とまぁ俺らしくねぇブチギレ寸前で近寄ってくと、雷は「男だからポイされる」だ何だとわんわん泣き喚いていた。
なんでいきなり逃亡して突拍子も無え事言ってんのか……考えるまでもねぇ。
翼との会話をおバカな脳ミソで誤変換しまくった雷が、勝手に勘違いしてメソメソしてやがったんだ。
「……なぁ、雷にゃん」
イったばっかで腰抜けの雷を、後ろから抱き締める。
発射までが五分と保たなくて、イったらイったでめちゃめちゃ体力削られて。
苦しそうに肩で息してる雷にガン勃ちの股間押し付けてる俺が、そう簡単に捨てるかよ。バカじゃねぇの。
小せえ。可愛い。汚したくねぇ。泣かせたくねぇ──こんな、簡単に口に出すのもこっ恥ずかしい感情抱いて湿った金髪を撫でてる俺が? 好きでもねぇ野郎の放尿なんか見たがると思うか?
「はぁ、……はぁ……ッ、なんだよッ! 俺は断じて、も、もも、も、漏らしてねぇからなッ!?」
「それは分かってる。この目で精液が流れてくの見たし」
「だからなんでガッカリしてんだよ!! 俺お前の性癖についてけるか不安になってきたぞ!!」
「お前はもう俺のもんなんだよ。俺がどんだけ変態でも受け入れるしかねぇの。今さら逃げるな。逃げたって無駄だ」
「な……ッッ!?」
猫目吊り上げてふぅふぅ言いながら見上げてくる雷に、再度忠告しておく。
単細胞生物のコイツには、ちゃんと言葉で言ってやんねぇとダメだって事が分かった。
このままレッスン続行して俺の指が三本入ったとしても、予告なく処女奪ったりしねぇと脳ミソとチン○に指令出してる俺は、かなり雷の事を大事に思ってる。
確かに雷は女みてぇに華奢だし、男のわりにチビかもしんねぇけど。股間にチン○生えてんのは事実で、クソ生意気な物言いも紛れもなく男だ。
なんで好きになったかとか、いつから好きだったのかなんて俺にだって分かんねぇが、いつの間にか雷が横に居ねぇと不機嫌になるようになったんだからそういう事だろ。
クラスが違うだけでイラつくんだ。明後日のクラスマッチだって、行事にはしゃいでる雷と同じ目標に向かえないのがムカついてしょうがねぇ。
雷とは、時間の共有をしたいって思った。
セックスなんか二の次なんだよ。
この俺が……この俺が、雷に触ってればとりあえず機嫌がいい。こうするのが俺だけだって思うと、それはもっとだ。
「迅さんよぉ……ずーっと自慢のブツがあたってますけど……」
「あててんだよ」
「おい! それはナチュラルなセクハラだぞ! しかも、そ、そそそんなギンギンなやつ……ッ」
「恋人へのセクハラは合法だろ」
「どんな理屈!?」
「ぷっ……」
雷のくせにまともな事言いやがって。吹き出しちまったじゃん。
こっちはお前の賢者タイムに合わせて、なし崩しになんねぇように気持ち伝えようとしてたのに。
喘いでる時に言ったって、どうせコイツはあとから「そんな事言ってた?」と可愛くとぼけやがんだ。
しっかり抱き寄せて、雷の薄い腹を撫でながら、今しかないと思った俺はシャワーのコックを撚って湯を止めた。
「よく聞け、雷にゃん。俺の気持ちって、雷にゃんが思ってる一億倍は重いから」
「ちょっ……迅、……ッ? いきなり何を……」
「たしかに伝説保持者だったかもしんねぇ。それは否定しない。でも雷にゃんに手出す前まで、俺は〝好き〟って感情が分かんなかったんだ。誰に対しても、ヤれればいいとしか思ってなかった」
「え……ッ? 最低っすか?」
「茶化すなら黙ってろ」
「ふぁいッ」
俺のマジトーンにビクついた雷は、胸を押さえて「怖ぇ、ピィ」と鳴いた。
今くらい真剣に話を聞きやがれっての。
いくらなんでも、コイツは俺の事を知らな過ぎる。
ここへ来るまで、捕まえて説教してやると意気込んでた俺は、雷が泣いてる姿を見て珍しく焦った。体内の熱が一気に引いて、顔面蒼白ってやつになった。
〝俺がコイツを泣かせてんだ〟と思うと、過去の自分にマジで頭にきた。
束バッキー野郎から「ビビってんじゃねぇ」と言われてムカついてたのもあるが、雷がそんな風に泣き喚くほど俺に信用が無かったってのは、自業自得とはいえ開き直る事も出来ねぇほど打ちのめされた。
俺はそういう男だから、が通用しねぇのが〝雷にゃん〟なんだ。
「……こんなに誰かを好きになる日がくるとは思わなかった。俺は一生、モテモテ人生歩みつつ独身を貫く予定だったんだ」
「……めちゃめちゃ特大自慢に聞こえるけど想像はつくな……」
「てか〝好き〟って言われんのがストレスだ、くらい思ってた」
「わーお……」
「今じゃ雷にゃんに誤解されただけでこの焦りようだぜ? お前が万が一別れるとかほざいたら、マジで監禁でも何でもしちまいかねない。今の俺は」
「ぴぇッ!? か、監禁……ッ!?」
ギョッとして振り返ってきた雷の唇を、サラッと奪う。
出しっぱなしだったシャワーの蒸気で、バスルーム内はミストサウナ状態。暑いくらいだった。
でも俺は、雷を離せなかった。
なんかもう……コイツの事を俺は、しんどいくらい好きだ。
「俺を信用出来ねぇなら、これからいくらでも挽回してやる。俺を信じろ、としか言えねぇけど、信じさせてみせる。だからな、勝手に誤解して突っ走って俺から逃げるとか、二度は許さねぇから。次やったらもっさん達と一緒に俺の部屋に軟禁する」
「ヒィッ……!?」
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