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⑱リア充への道!? ─雷─

 危ない空気だった。  世の中のカップル達が浮かれに浮かれる、クリスマスの過ごし方ついてをちょっと聞いてみただけなのにさ。  俺はケーキ作りをしてたって正直に暴露ったんだから、リア充爆発してた迅のクリスマス経験談も話してくれたっていいじゃん。  ほんとに俺は分かんねぇんだもん。  街のイルミネーションとか、どの店行っても流れてるクリスマスソングとかで嫌でもテンションは上がる。  「今年は一緒にケーキ作れないぜ!」とドヤ顔した俺に、母さんが放った一言はこうだ。 『やっとその言葉が聞けたわ』  え? 俺もしかしてめっちゃ心配されてた感じ?  でも相手は、母さんもメロメロでよく知ってる迅なんだけど……とまでは言わなかった、ちゃんと空気が読める雷にゃんとは俺のこと。  ただなぁ、迅の怒りポイントだけはまだよく分かんねぇ。  ダチとラブホ内覧会ツアーしようとしたって話しただけだぜ?  迅の方が〝よくない事〟してたんだろ?  それなのになんで俺がキレられるんだ? どして?? 「……てか、俺らが付き合ってんの、多分もう色んなヤツらにバレてんだろ」 「えッ!? なんで!? もしかして迅、言いふらしたのか!?」  馬鹿力のムギュッから解放してくれた迅が、もっさん達のトイレ片付けセットを持って立ち上がりながら、そんなとんでも情報を世間話みたいに繰り出してきた。  俺は迅のあとをついてって、子猫達の方を片付ける。何せ数が多い。迅の兄ちゃんの部屋だったそこが、キャットタワーとかトイレを置いたニャン専用部屋になっている。  換気も出来て、冷暖房完備で、ニャンだけの空間にもなって、って事で、迅は兄ちゃんの許可無く勝手に部屋を改造しちまっていた。 「雷にゃんが言うなっつーから言いふらしてねぇよ。けどな、こないだのネバネバ女が俺らのニャンニャン盗聴してたの、気になるんだよな」 「あ……ッ! そういえばそんなこともあったな!」 「忘れてたのか? めでたいヤツだな。あれをグルでやられてるとなると……」 「なると……?」  迅にはまるで似合わねぇ、トイレ掃除用の穴開きスコップを片手に真剣なツラして俺を振り返ってきた。  毎日がハッピー過ぎて完璧に忘れてたぜ……! ていうか、あのヤバいネバギャル女のせいで、ボイスレコーダーが迅のおかずになってんだからな……!  スコップを持って凄んでくる迅も、そういう意味じゃ色々とヤバイ。 「今までの俺に対する仕返し、あるかもしんねぇ」 「えぇぇッッ!? それ俺、超とばっちりじゃね!?」 「ぶふっ……!」  いやいや迅さん、そこ吹き出すとこじゃねぇよ。笑うと爽やかなイケメンに変身しやがって。  グルで俺らのこと嗅ぎまわってるヤツらが居るとしても、それって俺は何も関係なくねぇ?  迅からボコられた腹いせなら、迅にだけその怒りぶつけてればいいじゃん。  ギャルはヤンキーとつるむもんだしな、迅が言ってることがマジだとしたら俺は呑気に外出歩けねぇよ。  トイレ掃除が終わった俺たちは、片付けセットを持って迅の部屋に戻った。迅は立ったまま、今度は茶色いクローゼットを漁り出してそこから俺の寝間着を取って手渡してきた。 「だから知らねぇヤツにはついて行くなって言ったんだ。お前はメシとかお菓子とかオモチャとか猫でホイホイ釣られるだろ」 「にゃッ!? ……いやまぁ……否定はしませんけど」 「だろ? 雷にゃんは俺の言う事だけ信じたらいい」 「迅のことだけ……?」 「そ。返事は?」 「ハイッ!!」  そんなのお安い御用だぜ!  ……ん? これ使い方合ってる? まぁいいや。  俺は迅の言葉だけ信じる。他の誰から誘われても、釣られねぇ。そんなの今さら言われなくても分かってるもーん。  ……ふんふん。  俺はしたり顔で、手渡された寝間着を嗅ぐ。するとめちゃめちゃいい匂いがした。迅の香水の匂い。……これがエロいのなんの。 「ん、じゃあ風呂入るか。一緒に」 「おう! って、一緒に!? や、やらしいことはしねぇぞ!?」 「前もってそう言われるとな。期待されてんのかと思っちまうんだけど」 「違う違う違う違う!! いいように受け取り過ぎな!?」 「今日は一人レッスンしねぇの?」 「それを俺に聞く!? うん!って言いにくいぞ!」 「うん、なのか。……ヨシヨシ。正直だな、雷にゃんは。可愛い」 「えぇッ!? おまッ、引っ掛けやがったな!?」 「何も? 勝手にボロ出したの雷にゃんじゃん。単純バカは扱いやすくていいなぁ、これでもうちょい危機感持ってくれてりゃなぁ、俺がこんなに心配しなくて済むんだけどなぁ」 「なにぃぃッ!? ど、どれに突っ込んだらいいんだよ!!」  迅めぇぇ〜〜!! 俺の一人レッスン未遂にご期待くださってるようですけど、そんなの迅の前では出来ねぇから!  でも迅……俺がアタフタしてるとこ見てすんげぇ楽しそうじゃんー! 悔しいけどかっけぇなぁ……!  エッ、そのエロスマイルのまま近付いてくんのッ? お、おまけに腰抱かれた……!? そんで俺の大弱点の耳元で、……? 「俺は雷にゃんに突っ込みてぇよ」  キターーッッ!!  心臓がムズムズキュンキュンするやつ!  コイツ絶対自分のイケボ自覚してんだろ! 「突っ込みてぇ」とかそんなパワーワードはイケボで言っちゃダメなやつだーッ! 「ま、ま、まだそれ言ってんのか!」 「あぁ、別にこれ急かして言ってるわけじゃねぇからな?」 「ほ、ホントかよ!? 最近すぐソレ言うじゃん! 焦ってねぇとか余裕発言かましといてさぁ! しかもイケボでさぁ!」 「俺をみくびるなよ。マジで焦ってねぇんだけど、でも願望くらい言ってもいいだろ? さっき太ももエッチした時うっかり挿入しちまいそうになったじゃん、あれクソほど興奮した」 「~~ッッ!!」 「雷にゃんとセックスすんの、めちゃめちゃ楽しみなんだよ。突っ込みてぇのもあるけどな、俺は雷にゃんをエロエロに乱れさせてぇの」 「────ッッ!!」  はい、脳死。  俺の彼ピッピがエロエロです。俺じゃなくて、俺を乱れさせてぇとか言っちゃってる彼ピッピの方がエロエロです。  抱き締められてほっぺたにチュッてされたらもう、確信犯としか思えまてん。ぴえん。 「て事で雷にゃん。一人レッスン、見せてな?」 「えッッ!?」 「ローションとゴムと、……それからコレ。準備は整ってる」 「ひぇッッ!?」 「あーもう興奮してきたぜ」  待て待て待て待て待て待て待て……ッッ!  一人レッスンの準備が整ってることもだけど、最後に俺に見せてきたソレ……!  未開封のパッケージに、あなるぷらぐって見えたけど気のせいだよな……!?

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