180 / 213
⑱リア充への道!? ─雷─⑧
なんだぁ?
俺は今、誰だか分かんねぇ野郎とのん気に会話してる場合じゃないんですけど?
「……誰だよ。オレじゃ分かんねぇ」
『だからぁ、オレだって! 声聞いて分かんだろっ? オレだっつの!』
やけに馴れ馴れしい。てことは、やっぱ一組の誰かなのか?
……いやいや、待てよ。こういうのニュースで見た事あるぞ。
もしかしてのもしかして、俺犯罪に巻き込まれようとしてんじゃね?
どうしたんだ、俺。プラグさん突っ込んでるわりには冷静じゃん。
「まさかお前……オレオレ詐欺? 俺のこと騙して大金ぶん取ろうとしてんな?」
『違ぇよ! ……なんだコイツ、噂よりバカじゃん』
「なんか言った!?」
おい! いま聞き捨てなんねぇセリフ聞こえたぞ!
てか電話の向こう、〝オレオレ〟の主の他にも声がする。
モール内はクリスマスソングが流れてて、しかもカップルやら家族連れやらで大賑わいだから聞こえにくいけど……誰かと会話してるような……。
『今お前どこ居んの?』
「えッ? 誰だか分かんねぇヤツに教えるかよ! その前に名を名乗れってんだ!」
『あ、あー、そうだな。えーっと、む、む、……』
「あぁ! 村上!?」
『そ、そうだ! オレはムラカミだぜ!』
「なぁんだ、それならそうと素早く名乗れよな! オレオレ言うから詐欺かと思って警戒しちまったじゃんー! ちなみにどの村上?」
『どのムラカミかって!?』
なんだ、村上だったのか。それなら周りにツレが居てもおかしくねぇよな。
一組の連中もやたらとつるみたがるヤツばっかで、女子みたいにグループ分けがあるし。
まぁヤンキーってのはそういうもんか。
ひとまずどの村上か教えてもらわねぇと、用件聞く気にもなんねぇよ。
ジッとしてたら違和感無えんだけど、これ以上動くのはマジでキツい。俺は早くプラグさん抜きてぇんだってば。
「〜〜っ、そうだよッ。俺言ったじゃん、名前覚えらんねぇから名前統一するって。今んとこ村上は十三人居るだろ。見た目の特徴言ってくれたらどの村上か分かるから」
『あっ!?』
下半身をモジモジしながら電話してんのめちゃめちゃ恥ずくて、早口になっちまった。
けど村上は、俺じゃなくてツレの方に『おい、コイツかなりのポンコツだぞ』とか何とか悪口言ってんのが聞こえた。
……もういいや。
あんま大声出してプラグさん刺激すると、俺が悲惨なことになる。
悪口言うために電話してきたとかサイテー! 迅に言いつけてやるー! なんて女々しく思っちまうのは、今俺がひとりで勝手に追い込まれてるからだ。
ヒソヒソ、ブツブツ、電話の向こうで盛り上がってる村上連中に構うヒマあったら、俺は自分の身を守りてぇ。
「用が無えなら切るぞッ。俺いまそれどころじゃねぇんだ!」
『待て待て! まだ切るな!』
「なんだよッ」
『藤堂がお前を呼んでんだよ!』
「……え?」
……迅が? 俺を呼んでる? ……どゆこと?
あと……三十分くらいで上がると思うけど、 迅は絶賛バイト中だろ?
それに、俺を呼んでるにしてもなんで村上を通すんだよ。迅がそんな回りくどいことするか?
……おかしくねぇ?
「いやそれは無えよ! だって迅は今バイト中なんだぞ。終わったら合流するって話にはなってっけど……」
『そうそう! なんかバイト早く上がれたとかでな!』
「え!? そうなのか!? ……って、それなら迅が俺に直電するはずなんだけど。アイツが誰かに伝言頼むとかあり得ね……」
『そ、それがあり得るんだな、これが! 今日はほらっ、クリスマスじゃん? サプライズしたいんじゃねぇの〜?』
「さ、サプライズ……ッ!?」
なるほど、サプライズか!!!!
そういうことなら理解できなくも無えな!
迅ってば見た目に似合わず〝ムード〟とか〝シチュエーション〟にこだわるロマンチック男子だしッ?
今日はクリスマスだからってラブホお泊まりを計画してくれてて、それは俺がカップルのデートを経験したことが無えって話したからだった。
クリスマスデートは手始めにイタリアンでも食いに行く? って言ってたもんな♡
俺が宅配ピザばっか食いたがるからイタ飯好きだと思われてんだろうけど、迅と食えりゃ何だってうまうまなんだよ。
それから夜景見に行ったり? 手つないでちょっと散歩したり? とりまイチャイチャしようなって迅も嬉しそうだったからなー♡
そうか、サプライズかぁ、ふむふむ。
ロマンチスト迅のことだ。マジであり得ない話じゃねぇぜ!
『○○駅で待ってるらしいぞ! ったく憎いよな、サプライズなんて! とにかくすぐ来いってさ!』
「フフンッ♡ マジかよぉ♡ ンなの先に言っといてほしいぜッ♡」
『前もって言ったらサプライズになんねぇだろ』
「あッ、たしかに! お前頭いいな!」
結局どの村上かは分かんねぇままだったが、会話しながらトイレを見つけた俺はルンルンで個室にインした。
なんと一階のトイレは出入り口の近くにあったんだ。
前のめりになって、ズボンとパンツを少しだけ下ろす。……なんだこのエロい格好は。
プラグさんを掴んで引き抜こうとすると、今までピッタリハマってたものがずるずる抜けてく感覚に、怖いくらい感じてしまった。
「……ふ、ッ……んぁッ♡」
抜いてるだけなのに、こんなに気持ちいいなんて……!
ヤバイ……。
俺ガチでお尻で感じるようになっちまってるよ……。
プラグさんを伝って、ローションがトロットロ溢れてくる。今誰か入ってきたら、確実にこのぬちぬち……というやらしい音を聞かれちまう。
細いとこから太いとこに差し掛かると、嫌でも「ふん……ッ♡」て甘ったるい声が出た。
じわじわやってたらオナってるように思えてきて、これじゃ挿れる時と同じくらい時間かかると思った俺は、がんばってプラグさんをえいっと引き抜いた。
ぬぽンッと抜けたコンドーム付きのプラグさんを直視するのは、無理だった。
急いでトイレットペーパーでぐるぐる巻きにして、ヒクヒクするお尻とか太ももも綺麗にして、トイレを出る。
「おぉ……!! なんて開放感なんだ!」
普通に歩けるのがこんなに嬉しいとは……ッ!
まだお尻に何かが刺さってる感じはあるけど、プラグさんに気を取られて歩くのとは全然違うぜ!
手洗い場の下にゴミ箱があったから、プラグさんとはそこでバイバイした。
ありがとうプラグさん。おかげで挿入予習バッチリ出来たよ。
もう二度と世話になることは無いと思うと寂しいような気もするけど……俺は今日、迅の迅様を迎え入れないといけないからな。
ここでサヨナラだ。
「えっと、迅が待ってんの○○駅って言ってたよな。……ヘヘッ♡ サプライズかぁ♡ 迅のやつ……ッ」
下半身が爽快になった俺の気分は、ロマンチスト迅のサプライズ計画に乗っかってルンルンだ。
○○駅はモールの最寄り駅。そこまでの道のりを、俺は疑いもしねぇでスキップまでして浮かれていた。
すれ違うカップル達に変な目で見られようが、どうってことねぇ。
だって俺の彼ピッピは、世界で一番カッコよくてキマってんだもんッ♡
俺らは最強迅雷カップル。へへへッ!
ともだちにシェアしよう!