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20ついにオトナになりました!? ─雷─③※

 本領発揮した迅と、腹を括った俺。  経験豊富な元伝説保持者に身を委ねるしか出来ねぇ俺は、明らかに劣勢だ。  どんと来いッ! とか大口叩いときながら、「土壇場でビビる子猫」……って、風呂場に連れ込まれる時に迅から言われた。  屈辱だ。 「迅! 煽ったのは俺かもしんねぇけど、意思曲げんの早すぎねぇ!?」 「…………ん」  今日はしねぇってどこのどいつの発言でしたっけ!?  マジの早業で俺と自分の体をキレイキレイにしてる迅さんったら、さっきから余裕でシカトしてくんだけど。  迅様は完全に臨戦態勢に入ってる。  対して子猫な俺の息子は意気消沈。  そりゃヤりてぇけど! ヤる気満々で準備もしたし、迅のことも盛大に煽ったけど!  無言であれこれヤられると、さらにビビっちまうんだ俺は……! 「迅! なんとか言えよッ!」 「ナントカ」 「そうじゃねぇぇッッ!!」 「うるせぇな。ちょっと黙ってろ」 「えぇッ!? 今まさに愛の営みしようかって恋人にそれはなくねッ? 俺は童貞処女なんだぞ! まずは風呂でイチャラブしつつムード高めてムラムラすんじゃねぇのか!」  力説すると、「フッ」と笑われた。  俺、なんか面白いこと言った?  頭の上からシャワーのお湯をぶっかけてくる迅に、俺はめいっぱい言いてぇことあったのに出来なくなった。  ゴツいギンギラギンなネックレスを見つめて、男らしく浮き出た鎖骨に噛み付きてぇ衝動には駆られちまったが、迅の「フッ」で俺はぴえん。  笑わなくたっていいじゃん。  無言で黙々と介護されたら誰だって怖えし。  そんな俺の不満は、バッチリ表情で伝える。絶対言い負かされたり誤魔化されたりすっから、俺も無言攻撃だ。 「……分かったから、ンな可愛いツラで見つめんなよ」 「いッ? えッ?」  か、かかか可愛いツラ? してたッ?  なんの権限があって俺をビビらせんだ!! って、すげぇ文句タラタラで生意気なツラしてたろッ?  それを可愛いとは……迅の目は確実にヤバい方に向かってんな。もはやどんなツラしてたら迅がイラつくのか、分かんねぇよ。 「迅、お前……ッ」 「分かったって。さっきすぐに襲わなかったから拗ねてんだろ? 望み通り襲ってやる。でも先に体洗いたかったんだからしょうがねぇだろ」 「はッ?」 「汚え返り血浴びてっから」 「ヒェッ……!? 血……ッ?」  なるほど!! って、そうじゃねぇ!  納得しかけた俺はバカだ。  平然と俺を見下ろしてる迅のガチ切れしてた光景がよぎって、喉が鳴った。  そういえば迅の七万円のコートはビリビリのボロボロで、しかもさっき見たら真っ黒のはずのそれに変な模様がついてたんだ。  ほっぺたとか首とかには変色した血がついたまんまだったし……だから風呂風呂言ってたのか……! 「とりま綺麗になった?」 「へッ?」 「血だよ、血。取れてる?」 「んふッ! と、取れて、る……ッ!?」 「どっちだよ。疑問形だと分かんねぇよ」  返り血なんて浴びたことねぇから分かんねぇが、迅はそれさえ似合うからポテンシャルオバケだよな。  「ほんとに取れてる?」と手のひらで自分の首筋をなぞってる迅が、めちゃめちゃエロく見える。  全身濡れてて、規格外の迅様はギンギンで、なぜか見惚れた唇までオトナの雰囲気ムンムンだ。  これ言うと怒られそうだが、血が似合う迅は一見鬼畜なプレイを好みそうなんだよ。  相手の快楽なんか関係ナシって感じで、迅ばっか気持ちよくなって終わり。何ならアブノーマルなプレイでしかイけねぇとか言いそうな風貌。  でも実は、こんなおっかねぇツラしてものすごぉぉく甘々なエッチをしたがってることを、俺は知っている。 「じゃあ……始めるか」 「ピッ♡」  ほらな。  俺が唇ばっか見つめてたのに気付いた迅は、やわらかーく抱きしめてきての顎クイ。……今日もキュンです。  チビな俺とキスする時、ノッポな迅はかなり背中を丸めなきゃなんねぇってのに……気が付くとよく立ってしてるけどいいのかな。  どうでもいいことを考えてると、ふわっと唇が触れ合った。  あー……これ好きなやつ。  温かくて、キュンキュンするんだ。  ねちっこいのより、俺はこのチューの方がドキドキして興奮する。だって迅、ねちっこい方のキスすると俺のベロ食おうとしてくんだもん……。 「ふぁ……ッ、迅……ッ」 「雷にゃん、舌引っ込めるな。食えねぇだろ」 「ンむぅぅ……ッ♡」  やっぱそっちのキスをご所望らしい迅が、「俺のだぞ、食うな!」ってがんばって引っ込めてる俺のベロを、経験者たる技で無理やり持ってった。  めろめろ絡ませてくる迅のベロは、ただ動いてるだけなのにエロい。やわらかいのか固いのか分かんねぇし、迅が指示してこんな自由に動き回ってんのか知らねぇが、受け止める方は大変なんだぞ。 「ん、ンンッ……!」  でも、自由なベロがどんなにエロエロだって、普段から猫可愛がりしてくる(〝雷にゃん〟だけに)迅のことだ。  初体験はきっと、いつも以上にトロトロ甘々な彼ピッピが降臨する──。  単純な俺は、そう思っていた。 「んくッ……! んんッ……♡ むぅッ……!」 「足は閉じるな。支えといてやるから」  だが……ッ! 手練の迅は、そんなに甘くなかった……ッ!!  さっきと同じ格好で(デジャヴ!!)、俺の許可無くお尻をクチュクチュし始めた迅に慈悲の心は無いらしい。 「ふにゅッ♡ んむッ……♡」 「もっと舌動かせ。ディープキスごときで怖じ気付くなよ」 「はぅ、あ……ッ!」  立ったままのねちっこいキスですでに腰砕けの俺は、穴をクプクプいじくられたらひとたまりもねぇって、迅はご存知ですよねッ?  それなのに彼ピッピときたら、「オラ、しゃんと立て」と童貞処女にまったく優しくねぇ追い打ちをかけてくる。  ここは風呂場だ。  そんで迅様の準備は完了。ついでに俺の穴も着々と拡張され中。  ……あれあれあれあれ?  俺のドキワク甘々初体験、まさかアブノーマルエッチになっちまうのぉッ?  せめて初めてはベッドが良いんですけどー!!

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