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終・迅雷上等! ─迅─⑥※

 男としては悔しい。  雷を気持ちよくする間もなく、ロクにピストンしねぇままイくのが。  俺はなんで、今まであんなに遅漏だったんだ。  ナカの強烈な締め付けに合いながら、貫いた雷の背中をふと撫でる。チン○にもそれが伝わるほど、小せえ体がビクンッと揺れた。 「雷にゃん、苦しいか」 「ふンッ……! ン゙ッ……!」  濁点付きの喘ぎ声はただただ苦しそうで聞いてらんねぇと思うのに、なぜか異様に興奮してる俺はそういう性癖でもあんのかもしんねぇ。  素直に頷いて金髪をゆらゆらさせてる辺り、それはマジだ。  このままもっと奥まで挿れたら、雷はたぶん声にならない悲鳴を上げる。  元々体格差は歴然で、俺らのセックスだと雷の負担は計り知れねぇ。どんだけ周到にレッスンしてようが、アナルプラグで拡げてようが、本番の衝撃なんかヤってみないと分かんねぇ未知の世界だったろ。  ヤり慣れたコトをするだけだって、たかを括ってた俺もそうだ。  最中に相手の顔色なんかを見たことが無かったから、どうすれば雷が気持ちよくなるのかも分かんねぇ元クズヤリチンだって気付かされた。 「うッ……ン゙ッ……!」 「どうする、体位変えるか?」 「迅が、変えたい、なら……ッ」 「健気かよ」  息も絶え絶えに言うセリフじゃねぇだろ。  「抜け」と言われないだけまだいい。必死で俺のチン○に慣れようとして、枕にしがみついてジッと動かずにいる雷がとんでもなく可愛く見えた。  俺に委ねてくれるのは嬉しいが、雷はどっちの方が楽なんだろと考える。  バックで挿れた方が苦しくねぇって、さっき言ってたか。ホントは色んな体位を試してみたいが、半挿れで初回の今日は雷の体を第一に考えよう。  でもやっぱ、顔が見えねぇのはちょっと俺的に……。 「雷にゃん、こっち向けるか」 「……ん、?」 「また目閉じてんじゃん」  俺の声に反応した雷が、ゆっくり振り返ってきた。そのツラはまさに〝苦悶〟って言葉がバッチリ当てはまる。  引っかかって入んねぇ場所から、俺は今も先へは進んでない。二回戦目だし少しは慣れたかと思いきや、何回言っても開けらんないらしい可愛い猫目は固く閉じられていた。 「雷にゃん」 「はぅッ……?」 「目、開けろ」 「うッ……ぅん……ッ?」  俺がもう少し粗チンだったら、雷にこんな苦しい思いさせなくて済んだのに。  抜きっこ大会と指レッスンで終わらしときゃ、気持ちいいまんまフニャフニャな雷を見てられたのに。  繋がってることで不自由な下半身に眉を顰めつつ背中を丸めた俺は、少しでも雷にこの気持ちが伝わるように優しく頭を撫でた。  腰を高く上げた状態での振り返り雷にゃんは、ツラそうに開けた薄目でもクソほど可愛い。 「おはよ」 「お、おはよ……ッ?」 「目は開けとけ。そっちのが可愛いから」 「かわッ……かわいいッ……?」  せっかくこっちを向いてたトロ顔が、また枕にポスン。  俺の言葉は覿面で、照れてどうしようもねぇ雷は何回言っても「可愛い」に慣れない。 「マジ……ッ? 俺、かわいい……?」 「可愛いよ。雷にゃんにはもう何百回と言ってるだろ。何を今さら」  俺にも誰かを愛でる気持ちがあるって教えてくれたのが、雷だ。  こんなに可愛いと思ったヤツは居ない。  こんなに何回も、面と向かって「可愛い」と言った経験も無い。  こんなに毎日〝好きだ〟と思えるヤツは……後にも先にも一人しか居ない。  マジで今さらじゃん。  思ったら思っただけ、俺の意思とは関係なくそれが勝手に口から出ちまうんだから。  鈍感で純情な雷を繋ぎ止めるみたいに、惜しみなくウザいほど言いまくってる気がするんだが……。 「俺の愛情表現、まだ足んねぇか?」 「いッ、いえいえいえいえッ!! 足りてます! すげぇ足りてます!!」 「……ッ、これ以上締めるな」  ジーッと雷の目を見つめると、ほっぺたとナカが同時に反応した。  血色のいいほっぺたはピンクから赤に。キツキツなアナルは、反射的に俺を上向かせるほどグニュンとうねって締まった。  あんまり雷に刺激を与えると、俺も窮地に陥る。  余計なコトは言うまい。 「なぁ、動いて大丈夫そ?」 「ひぁッ……って、もう動いてんじゃん! あッ……!」 「おっしゃる通り」 「あっ……あぁッ……!」  我慢できなかった。  締め付けられるだけじゃなく、強弱のついたうねりでチン○を刺激されると腰が勝手に動いてた。  グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ。  俺の動きに合わせて、雷の体が揺れる。引っかかりを突破しねぇように動くとなるとかなり神経を使うが、まぁそこも俺らの初体験っぽくていいじゃん。  ナカを擦る音まで初々しく聞こえるし。 「はぁッ……ンッ……! ひぅッ!」 「雷にゃん可愛い」 「あッ……♡ んくッ……!」 「可愛い、雷にゃん」 「ひぁぁ……ッ! やめッ……迅、あんま、可愛いって……ッ、言うな……!」 「なんで。可愛いヤツにしか可愛いって言わねぇよ、俺」 「あぁッ♡ ……ムリッ! ンなの、照れる! ひぅぅ……ッ!」 「死ぬほど可愛いな。もっと言ってやる。……〝雷にゃん可愛い〟」 「やめ、ろッ! うぅぅッッ!」  イケボなの自覚しろって、くぐもった声で恨み言を吐かれた。  俺はそれでも、言うのをやめなかった。  突くのと一緒に、「可愛い」を言いまくる。その度に雷は、やめてほしくなさそうな声で「やめろ」と言った。  濁点付きだった嬌声が高くなるにしたがって、しなる背中に手を添える。  揺れる金髪と、そこから覗く赤く色付いた耳と、肩甲骨の浮き出た細え背中と、ぷりんぷりんな桃尻と、その間に刺さった俺のチン○によがる雷を、しっかりと目に焼き付けた。 「迅……ッ、早、いってば……! 迅……!」 「イく」 「えッ? あッ……ウソ、やめッ……!」 「雷、愛してる」 「ひッ……あ、あッ……ッ! うッ……! 迅……ッ♡」  夢中で腰を振りながら、うねりまくるナカで俺は達した。  パタリと動かなくなった雷の桃尻を揉んで、余韻の最中、数秒前の自分の言葉を反芻する。  太ももエッチとはワケが違う──俺は雷に、そう言った。  無理なら別にしなくていい、俺らの間じゃセックスがそんなに重要とは思わない──こうも言った。  でも俺がムリになった。  お前のナカがこんなに狭くて、こんなに俺を締め付けて離さないなんて知ったら、何回でも味わいてぇと思うだろ。  こんなに……好きだって思い溢れてこねぇんだよ。  他の誰にも。

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