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終・迅雷上等! ─迅─⑦
🐾 🐾 🐾
〝愛してる〟……か。
イく寸前で理性が飛んじまってたとはいえ、咄嗟に出た言葉が「可愛い」でもなく「好き」でもなく「愛してる」だとは。
俺の名前を呼ぶ声が、鼓膜を突き抜けて脳まで届いた気がした。
おかげで今までに無いほど興奮して、イく時はほぼ無。その後は長い余韻で頭がクラクラした。
触ってやる余裕も無かった半勃ちのチン○は、四回目を発射した形跡が無かった。だからって高度な中イキしたわけじゃなさそうなのに、俺がイく間際のナカはゴム越しにもかかわらず精液を搾り取る勢いでうねって、大蛇を締め付けた。
元伝説保持者の俺でさえ飛びそうになったんだ。
初めてピストンを受けた雷はもちろん、そのまま撃沈。
……ヤバかったよな。マジで。
「むにゃ……」
横になった俺の体の上に乗せた雷が、小さく身動ぎした。
ほんの二時間くらいか。爆睡してたのは。
猫の手みたいに手のひらを結んで、俺をベッド代わりにうつ伏せで眠りこけてた雷の目が、薄っすらと開く。
「ん……? 迅……?」
寝ぼけ眼とはこの事。
胸元からポワポワしたツラで俺を見上げてきたんだが……クッソ可愛い。
「起きたのか」
「んー……今何時?」
「五時半。もう少し寝てろ」
「うむ……」
落ちた後、コイツ相手にのみ甲斐甲斐しい俺はパパッと後始末をしてやったんだが、体を拭こうがアナルからローションを掻き出そうが、まったく目を覚まさなかった。
そんだけ疲労困憊だったんだろう。
雷にとって今日は、怒涛の一日だったに違いない。
「迅は寝ないのか? てかずっと起きてたの?」
「ああ、なんか眠れなくてな」
「どうしたんだよ」
「いや……別に」
「またそれかよ」
「ん?」
ポワポワから急に不機嫌になるって。情緒不安定か。
腹に乗って喉をゴロゴロ鳴らしてたくせに、上体を起こした雷は、俺の上からコロンと転がり落ちて右隣りに移動した。
俺、眠れねぇって言っただけだぞ。
ため息吐くようなことか?
「俺たちは晴れてホンモノの恋人になったんだぞ。何か言いたいことがあんなら言えば?」
「言いたいことなんか無えよ。雷にゃんは気にしなくていいから、も少し寝ろ」
「んーん、もう目が覚めちった」
両腕をベッドについて伸びをする雷(また女豹のポーズだ)が、猫そのものに見えた。
しまいには毛繕いでも始めんじゃねぇかと様子を窺ってると、ピタッと動きを止めた雷は自身の桃尻を触る。
「うッ……お尻がヘン……」
不機嫌から一転、そう呟いて瞬時にほっぺたをピンクに染めたネコは、単に寝起きで機嫌が悪かっただけらしい。
たとえ機嫌を損ねられても、俺には宥める術がいくつもあるからなんて事はないが。
「そりゃそうだろうな」
「でもヤな感じしねぇ。シアワセな違和感って言ったらサムい?」
「…………」
一瞬で照れたのはそういう事だったのか。
……サムくねぇよ。
なんたって、俺が眠れなかったのも同じような理由だった。
腹に乗った雷の温かさに感慨深くなって、出会った日のこと思い出したりなんかもした。
ハズくて何とも打ち明けにくい不眠理由だが、コイツ相手に本心を隠すのは違う。
女豹のポーズから寒がりな猫みてぇに丸くなった雷を抱き寄せて、ミニマムな体を腕の中にしまった俺は知らず口元が緩んでいた。
「来いよ」
「んにゃッ!」
「……いんじゃねぇの。俺も同じ。シアワセに浸ってて眠れなかった」
「え……ッ♡」
「雷にゃんの言う通りだった。セックスは重要だ。……俺たちにも」
「だろ〜? ヒヒッ♡」
……マンガみたいに笑いやがって。
背中向けてっから見えねぇが、どうせ可愛いツラをクシャクシャにして喜んでんだろ。
そんな事で雷を抱く腕に力がこもる俺も、人のことは言えなかった。
思い描いてたセックスとはちょっと違ったが、そうすんなりデキても面白くねぇ。
二十七センチも身長差があって、加えて俺らは男同士。リードする立場の俺が思いやってやらなくてどうする。
「……おい迅さん。ずっとギンギンなんすか?」
雷に触ってると、俺の意思とは関係なく知らねぇうちに勃起する。困ったもんだ。
ドキドキを隠し切れてねぇツラが、ふいに俺を振り返った。
「バレたか」と白々しく笑うと、何か言いたげな雷が体ごとこちらを向く。
「元気っすね……」
「なかなか治まりませんねー」
「そうなんすね……? したい……?」
「いや、今はそんな気分じゃねぇ」
「そんなガッチガチにしといてよく言う……ンッ♡」
確かに。
頷きながら雷の顎を取った俺は、今のところはタラコを免れてる唇に触れるだけのキスを落とした。
勃ってるからって、それがスグに〝セックスしてぇ〟に結び付くわけじゃねぇし。
ぶっちゃけ精液枯れるまでやりてぇけど、キス一つで黙るコイツをヘバらせて何が楽しい?
雷の体を思えば、無茶なんか出来るわけねぇから。
「今はな、こうして雷にゃんを抱っこしてたい気分なんだよ」
「あらまッ♡」
「プッ……! 色気無えよなぁ、お前。マジ可愛い」
「色気無えのに可愛いってどゆ事!?」
「総括すると、……そうだな。可愛いってことだ」
「い、い、意味不明すぎる……ッ」
俺も自分で言ってて謎だよ。っつっても、雷には愛でる言葉しか浮かばねぇんだから仕方ねぇだろ。
ほっぺた熱くしてるお前こそ、そろそろ素直に「可愛い」受け取れよ。
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