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第一話(鈴視点)

 Side 鈴 「おぉ〜今日もええ天気やわ〜」  窓から差し込む光で目が覚めて、豪快にカーテンを開けば昨日の雨が嘘みたいに燦々と太陽が輝いていた。  うんうん、やっぱり太陽の光を浴びると一気に目が覚めるわ~。  最近雨続きやったし、今日晴れてくれてほんま良かった!  あまりの天気の良さに朝から少しテンションが上がって、鼻歌なんか歌い出して、テキパキと朝の支度を進める。  と、言っても今日はまだ新年度が始まったばかりで、受講する講義も必修科目と選択科目合わせて3つ程度、それほど用意するものも無く、財布と携帯、筆記用具等々を鞄に詰めこんでドアに手をかけた所で「あ!」やなんて言葉が漏れた。  そうして徐に携帯を取り出し、短いメッセージを一つ送信。 「よし、行くか」  そのまま勢いよくドアを開けて外へと飛び出した。 ■□■  ピンポーン  念の為に、とメッセージを送ってみれば案の定返事はなく、既読すらつかなかった相手の家……と、言ってもすぐ隣の部屋なんやけども、まぁとにかく、目的の人物の部屋の前へと向かい、ボタンを押せば、軽快なチャイム音が響き渡る。  しかしいくら待てども家主が現れる気配は感じられない。 「も~、仕方ないなぁ」  なんて零した言葉とは裏腹に、思わず笑みが溢れてしまう。  そうして昨年、引っ越した直後に受け取った合鍵を鞄から取り出した。 「お邪魔しま〜す」  一応、そう声をかけたものの予想通り返事が返ってくる事はなくそのまま、ずかずかと部屋の方へ乗り込めば案の定、机に突っ伏したままピクリとも動かない姿が目に入り、自分の予想が正しかったことに思わず「ビンゴ〜」なんて言葉が漏れた。  けれどその言葉も目の前の人物を夢の世界から連れ戻すことにはならなかったのか、誰にも拾われることなく空気中に落ちて消える。  なので「よしっ」と言う気合を入れた声を漏らし 「めーちゃん!朝だよ、起きて〜。ほらほら大学遅れちゃうよ〜」  そう、声をかけながら身体を少し乱暴に揺さぶる。  そうしていれば小さな呻き声が聞こえ、そうしてのそりと顔を上げ、眠気眼でこちらを見ためーちゃんと目が合って一瞬鼓動が小さく跳ねた。 「んぁ、りんちゃん??」  そんな自分を誤魔化すように、呆れたような笑みを浮かべて未だ眠そうにしている目の前のめーちゃんに言葉を放つ。 「、りんちゃんですよ〜。また徹夜してゲームしてたん?パソコンの画面つけっぱなしやで〜」 「あーホンマや、またやってしもたわー」 「今日から新学期やから程々にしときなよって昨日言ったじゃん」 「ちょっとのつもりやってんけどな、思いの外、白熱してしもた。いや、最近すっかりご無沙汰やった人がひっさしぶりにログインしててそりゃテンションもあがるわな」 「あぁ、例のめーちゃんがSNS始めたばかりの頃にお世話になったーって言う」 「そうそう、俺の恩人。それまでオンラインはしたことなかった俺に手取り足取り優しく教えてくれた言わば師匠みたいな人やな」 「その人に会ってみたくて東京の大学行くことにしたんやもんね」 「いや、それは目的の一つであって会えたらええなー程度やから別にその人に会うために今の大学入ったわけとちゃうからな」 「はは、冗談冗談。でもその人とは結局まだ会えてないんでしょ?」 「そなんよな~。向こうがどうやら社会人らしくて、不規則な仕事してるって事しか情報がなくてな、一昨年あたりからログインすることも減ってて俺としてはブラック会社に勤める社畜ちゃうかと睨んでる」 「会えるとええな~」 「まぁせやから、そんな相手が久しぶりにログインしとったらそりゃテンション上がって思わずゲームしてまうよな、例えそれが徹夜でも!」 「全く、相変わらずめーちゃんはゲームの事になると時間忘れてのめり込むよね」 「え、だってめっちゃオモロイやん、ゲーム」 「うん、面白いと思うけど、めーちゃんほどぶっ続けてゲームはできないかな、集中力持続しそうにないし……って、のんびりお喋りしてる場合やなかった!ほら、早く準備してーな、1限の講義必修科目やから落としたら洒落ならんし」 「えー話し出したんりんちゃんやん」 「うっ、そうでした」 「ていうか、1回遅刻したくらい大丈夫ちゃうのん?」 「んー俺もそう思うけど、どうやらはづくん情報で今日の講義は初日から終わりに小テストみたいなんやるみたいなんよ」 「まじかー。と、言うか相変わらず羽月は情報が早いなー」 「この前デートした先輩さんから今日の講義を担当している教授の講義パターン聞いたみたい」 「ほーん」 「1限は必修科目やし、初日から躓くのはやっぱやばいやろー思って」 「確かにそれもせやね」 「うん、やからさ、ほらめーちゃん急いで準備して」 「ほいほい。あ、りんちゃん」 「ん?」 「起こしに来てくれてありがとさん」 「どういたしまして」

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